日本刀

 今なお多くの人々の心を魅了する、日本刀。そんな日本刀の歩みは、戦の歴史でもありました。刀剣が武器として用いられるのは古墳時代(3世紀)まで遡ります。その姿は、斬るのではなく突くことに特化した、反りのない真っ直ぐな形状の「直刀(ちょくとう)」でした。この「直刀」の時代は飛鳥、奈良時代(7 ~ 8世紀)まで続きます。この頃は海外から輸入された刀剣が最良とされていましたが、日本で最初の全国的な内乱とも言われる源平合戦を迎える平安時代(11世紀)には、輸入品だけでは間に合わず、日本独自の刀を進化させていく「刀匠(とうしょう)」が生まれました。刀は合戦のたびに刀匠により改良され、この時期より日本刀の象徴である反りが付けられた「湾刀(わんとう)」が主流となっていきます。その背景の一つは、騎馬戦の登場でした。馬に乗って刀を振り下ろして戦うために、刀は長寸で反りの大きい湾刀「太刀(たち)」へと進化を遂げます。日本で初めて武士が生まれる鎌倉時代(12世紀)には、幕府の保護のもと各地に名工が輩出され、短刀や薙刀、槍など新たな刀剣が生まれました。次の変化が訪れたのは、鎌倉時代後期の2度に亘る蒙古の来襲でした。これまで一騎打ち主体の騎馬戦から、集団戦・歩兵戦となったことから、作刀はさらに活気づき、現在の国宝とされる多数の名刀が製造されます。室町時代(14世紀)に入ると、「小反(こぞ)り」と呼ばれる短い刀や室内での戦闘を想定した「脇差(わきざし)」が生まれ、私たちが想像する武士の姿である「二本差(にほんざ)し」スタイルが確立されます。この頃、海外においてはその美しさから、重要な貿易品として扱われるようになっていきました。そして、織田信長や豊臣秀吉が活躍した戦国時代(16世紀)。名工による刀は、戦の戦利品や褒美として所有者が目まぐるしく変わり、「権力の象徴」という側面を持っていきます。そして戦に鉄砲が登場すると、武具や刀も急速に変化します。重い鎧では動きが鈍るため甲冑は軽量になり、強度も向上。これに伴い、刀も厚みは増し、肉弾戦で使いやすい重さと長さに調整された「打刀(うちがたな)」が誕生します。この打刀が現代まで続く主流となり、一般的に私たちが想像する「日本刀」の姿になったのです。江戸時代(17世紀)に入ると刀に関する法制度が定められ、身分によって刀の所持が厳しく取り締まられましたが、町人も短い脇差を一本差すことは許されていたといいます。泰平の世が続いたこの時代は、武器としての刀の需要は減っていきます。幕末期(1853)には再び機能性が重視され、合戦で用いられましたが、明治9年(1876)の廃刀令により、戦での日本刀の役割は終焉を迎えます。「美術刀剣」となった現代における日本刀は、今も多くの人を魅了し、親しまれています。それは、その美しい刀身から、現代の日本を築き上げてきた数々の歴史と武士の誇りを感じとっているからではないでしょうか。

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日本刀ができるまで

日本刀を一振りつくりあげるには、高度な技術力と精神力が必要です。刀匠は、日本刀の着想から素材選び、仕上げまでの責任を負う重要な役割になります。今回は一般的な日本刀のつくり方を紹介します。 wa_vol04_02_ja.png

日本刀の豆知識

一 「折れず、曲がらず」は素材にあり

日本刀の強さは、各部分に最適な素材選びを組み合わせていることにあります。軟らかさと硬さを両立する工程は「造り込み」と呼ばれ、粘りのある素材(心鉄)を芯にして衝撃を抑え、硬い素材(皮鉄)でくるむことで「曲がらず」を叶えているのです。 wa_vol04_03_ja.png

二 日本刀にかかわる職人たち

日本刀は、刀身をつくる刀匠だけでなく、切れ味や美しさを引き出す研師(とぎし)、刀に合わせた鞘をつくる鞘師、鞘に漆などで化粧を施す塗師、刀身と柄の間の金具部分をつくる白銀師(しろがねし)、鞘に鮫皮などで柄巻(つかまき)をつくる柄巻師、刀に合わせた鍔(つば)をつくる鍔師により生み出されています。 wa_vol04_04.png

三 太刀と打刀の見分け方

刀を鑑賞する際、刃が上向き、下向きにそれぞれ展示されていることに気づきます。これは太刀と打刀の違いであり、太刀は、馬上でも抜き差しがしやすいよう刃を下に向けて腰に吊るし(佩刀・はいとう)、打刀は、徒歩の乱戦に抜刀しやすいよう刃が上に向くように帯に指すこと(帯刀・たいとう)を示しています。 wa_vol04_05_ja.png

四 日本刀の魅力「いわく」

鬼の首を斬り落としたとされる「童子切安綱(どうじきりやすつな)」、織田信長が所有し、その切れ味から刀身を押し付けただけで棚ごと茶坊主を斬ったとされる「へし切り長谷部(はせべ)」、女性の幽霊を斬ったとされる「ニッカリ青江(あおえ)」など、刀の「いわく」(伝説)も現代の楽しみの一つとなっています。

五 刀匠になるには?

日本刀は刀匠のもとで5年~ 10年修行した後、文化庁の試験に合格した人間のみ製作が許可され、現在日本には、約350名の刀匠が存在しています。ちなみに、刀匠が1年につくれる刀は24振りまでと定められており、これは集中して優れた刀を打ってもらうためだとされています。

六 日本刀を買うには?

日本刀は刀剣専門店や骨董品店などで購入することができます。美術刀剣として認可された刀剣類には「登録証」が付帯されており、この「登録証」があれば誰でも刀剣を所持することができます。もちろん、鑑賞用なので、公共の場での使用、抜刀などは禁止されています。

写真提供:一般社団法人全日本刀匠会事業部 / 株式会社テレビせとうちクリエイト / 備前長船刀剣博物館

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