神社・仏閣

日本人の不思議な信仰心の理由

 「神様、仏様、ご先祖様、どうかお助けください!」絶体絶命の局面でこんな祈りを捧げるのは、世界広しといえども日本人くらいではないでしょうか。日本では、一般的に神と仏は対立するものではなく、特に違和感なく共存するものとして受け止められています。一神教を信仰している世界の多くの人々の目に、このような日本人の宗教観はかなり異質に映ることでしょう。日本の宗教観を語る上で象徴的な場所が、長野県の大町市にあります。若一王子(にゃくいちおうじ)という神様を祀る神社の鳥居のすぐ隣には、仏舎利の三重の塔が立っています。神社とお寺がぴったりと隣り合っていて、人々は神を祀る神社に参拝した後、仏教のお寺にも立ち寄っていきます。実はここだけでなく、日本各地には神社と仏閣が隣り合う場所が多数あります。神社のそばのお寺、いわゆる「神宮寺」は、約1,500年の長きにわたり神と仏が融和してきた日本の歴史の名残です。奈良の春日大社と向き合って建つ、国宝・阿修羅像で有名な興福寺も、八世紀に建てられた神宮寺のひとつと考えられています。

 日本神話では、まず自然があり、自然から神が生まれ、人が生まれたとされます。この神話を主柱とする神道では、太古から八百万の神々の存在が信じられていました。このような背景をもつ日本に、外来信仰である仏教が伝わってきた時、人々は仏教を対立するものではなく、仏も神のひとつ、いわゆる「仏神」だとして受け入れました。そして神社は自然を崇拝する場所、お寺は人間の生き方を考える場所として、あるいは神道を共同信仰、仏教を個人救済のための信仰として使い分けてきたのです。多種多様な神々が存在し、経典がない神道においては、この神社が「何を祀るためのものか」を知ることが理解の手掛かりになります。大きくは、太陽や山や滝、巨木や巨石、草木などの万物に神を見出す「精霊信仰」と、亡くなった人を神として祀る「祖霊信仰」とが共存しています。例えば、富士山や熊野三山などは、山そのものがご本尊の「精霊信仰」である一方、東京のど真ん中に豊かな森をとどめる明治神宮は、明治天皇と皇后を祀る「祖霊信仰」の神社です。このように神社は、「何を祀るためにつくられたのか」という“発祥”で分けることができます。一方のお寺は、空海が開祖の真言宗、最澄が日本で広めた天台宗など、仏教の「教え」の違いによる“宗派”で整理することができます。

 こうして仏教伝来からずっと神仏がゆるやかに共存してきた日本において、明治維新期に大事件が起きます。約300年続いた徳川幕府の反体制派であった尊皇攘夷派が勝利して生まれた新政府によって、神道こそが国家の祭祀の礎とみなされ、多くの寺が破壊されたのです。その後、日本が第二次世界大戦に負け、GHQによって神道が国家と切り離されるまで、仏教は不遇の時代を送ることになります。それでも、神と仏を同居させるDNAは、日本人の心に途切れることなく受け継がれてきました。大晦日の夜にお寺で除夜の鐘を撞き、元旦には神社に初詣に行きおみくじを引く。そんなふうに神と仏への信仰は、日本人の暮らしの中に習俗や慣習という形で、ごく自然に溶け込んでいるのです。

知っておきたい「神」と「仏」の違いとマナー

入口

 神社の入り口には「鳥居」、お寺には「山門」があります。これは、世俗の領域から神聖な寺社を区別するための“境界”にあたり、ここをくぐることで身が清められ、美しい心で拝むことができるといわれています。ここをくぐるときは、敬意を表して一礼をしてから中に入ります。

崇拝対象

 神社とお寺の大きな違いは“拝む対象”です。神社は、神聖な山や森、巨木などに御神体が宿るとされたため、自然崇拝的な性格から

「神」の形はあえてつくられませんでした。一方、お寺はブッダの遺骨である仏舎利を祀った塔などを当初拝んでいましたが、しだいに偶像としての「仏像」に変わりました。

参拝方法

 神社は鳥居を、お寺は山門をくぐったら、手水舎で手と口を清め、賽銭を捧げます。ここからの拝み方がそれぞれ異なります。神社では、二回礼をして二回手を打ち、両手を合わせて神様を拝み、一回礼をするのが一般的。これは、貴人に対して手を叩いたり頭を下げたりした太古よりの拝礼作法が、二千年の時を越えてこのような形となって伝承されているものです。お寺では胸の前で両手を合わせ、軽く頭を下げて仏像に拝みます。

wa_vol08_03_ja.png

体験型神社仏閣めぐりのすすめ

滝行で身を清める

 水の轟音や痛さ、冷たさに耐えながら無我の境地に至る滝行。古くは修験者(山伏)が本格的な修行の前に、己と向き合い、強靭な精神を養うために行われてきました。滝に打たれ、自然と一体になって身を清めた後は、新しい自分に出会えるかもしれません。

高尾山薬王院
東京都八王子市高尾町2177

wa_vol08_04.png

恐山で三途の川を渡る

 日本三大霊山のひとつ、恐山の入り口に俗世と霊界を隔てる「三途の川と太鼓橋」があります。橋の向こうには幻想的な地形が広がり、地獄とも極楽とも思われる風景は必見。この橋の勾配は急で、罪人には橋が針の山に見えて渡れないといわれています。

恐山菩提寺
青森県むつ市大字田名部字宇曽利山3-2

wa_vol08_05.png

断食で精神を清める

 数日間何も食べずに自己と向き合い、邪念を払うのに効果があるとされる断食。精神を鍛えるため“欲を断つこと”が目的とされ、また断食中の祈願は必ず聞き入れられるという説があり、修行として行われてきました。このようなお寺での生活は、日常を見直すきっかけになるかもしれません。

光信寺
広島県神石郡神石高原町光信5500

wa_vol08_06.png

ちょっと変わったご利益のある神社

宝くじ/宝当神社

 一攫千金”を狙うなら宝当神社へ。縁起が良い『寶當(ほうとう)』の文字にあやかってお参りした人の中から、宝くじの高額当選者が多数出たことに由来。宝くじが当たる神社として、多くの人が参拝に訪れています。

宝当神社
佐賀県唐津市高島523

wa_vol08_07.png

増毛/御髪神社

 日本で唯一の髪の神社で、日本最初の髪結いとされる藤原采女亮政之公を奉っています。髪の毛を増やしたい方や理・美容業界の方のパワースポットといわれ、境内には髪を納祭した髪塚もあり、髪供養をしています。

御髪神社
京都府京都市右京区嵯峨小倉山田淵山町10-2

wa_vol08_08.png

縁切り/安井金比羅宮

 主祭神の崇徳天皇が、一切の欲を断ち切って参籠されたことから、人間関係をはじめとした断ち物の祈願所として信仰されてきました。境内の“縁切り縁結び碑”の穴をくぐって、病気、煙草、賭事などの悪縁を切ってはいかがでしょう。

安井金比羅宮
京都府京都市東山区下弁天町70

wa_vol08_09.png
トップページへ