EYE on MARKET

空を駆けるものづくり

空を駆けるものづくり

~より早く、より速く、より迅く~

早さを求められる生産性

 全世界を襲うコロナウイルスによる市場変化は、航空機産業界にも強く影響しております。コロナ禍が生じる前の2019年度までは、航空機市場は年率4~5%の需要の伸びを見せると予測されておりました。これは、格安航空(LCC)による、短距離間移動の需要後押しが全世界に及び、19年度以降の20年間で4万機以上の航空機の生産を必要とした点から生じています。これは単なる予想ではなく、Airbus・Boeing 社という世界最大級の超巨大メーカーにおいてなお、すでに7~10年分の生産分におよぶ受注を得ていたことが根拠となっておりました。また中国では同じく国産機に多大な後押しをして開発を継続しております。

 各航空機メーカーにおける開発の進捗や様々なトラブル対策など、航空会社に納入される種類や機数が変化は生じ得ますが、最終的に航空輸送を必要とする需要―特に中国をはじめとするアジア圏における中産階級の増加に伴うもの―は変わらないため、特に各国内を巡る短~中距離輸送における需要機数は大きく下がらないと予測されます。

 実際にBoeing 社から例年発表される今後20年間の予測においても、コロナ禍前の44,000機に対し43,000機と若干の低下は見られるものの、単通路機を主軸とした機数に大きな減少は見られません。ただし、航空輸送量の回復には2024年まで必要とする見方もあるため、短期的には需要量に変動が生じ易いと考えられます。

 一方で航空機はそのサイズが巨大であり、厳しい精度を要する精密機器であるために、巨大航空機メーカーといえども自社内の1工場で全てを賄うことはできず、複数の部品メーカーへと生産を分散しています。つまり1機当たりに要する製造期間は長くなるのですが、各航空会社の需要に応えるためには、高品位を維持したまま、より大量かつより素早く生産できる必要があります。特にコロナ禍より市場が回復した暁には、一旦縮小させた生産力を早期に回復させる必要があるため、各工場における生産性の向上は従前よりも強く要望されることになると考えられます。

 つまり切削工具メーカーである当社は、従来培ってきた技術を基にした高性能製品によって、メーカー各社に「早さ」を実現出来るような提案をより強く実施してゆくこととなります。

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[図1. 2019年度までの市場成長予測]
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[図2. 航空輸送量回復予測例(引用:日本航空機開発協会「民間航空機に関する市場予測2020-2039」より)]

速さを実現する工具を

 生産能力を高め「早く」するためには、つまるところ加工するSpeed を上げるか、大型の工具で一気に削るかしかありません。しかしどちらの場合でも、工具に求められる技術のハードルは高く、くわえて航空機に用いられる素材が特殊であることもあり、容易ではありません。

 当社はこれまで蓄積してきた材料的、形状的技術を用いることによりこの課題に取り組み続けています。

 下に示すような高性能な切削工具の数々を生み出すことで、1個でも多くの生産を成し得たいユーザーの要望に「速さ」で応えています。

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広がる世界に迅く飛ぶ

 航空機メーカーが生産能力を高めるもう一つの手段として、生産工場を多く持つ、という手があります。その展開は「迅く」、アジア方面も中国やシンガポールのみならず東南アジア各方面に、米国もメキシコなどの方面へ、それぞれ枝葉を伸ばしており、全世界に広がっていると言えます。

 当社も欧米をはじめ全世界に営業拠点、製造拠点、ならびに技術拠点を有しており、これらと日本国内を有機的につなぐことで個々のエリアにおける対応を可能としています。

 現市況の影響から、各航空機メーカーが生産拠点を変更・集約を図る動きはすでに出始めておりますが、どの地域に対して重点が変更されたとしても、当社として「迅く」その動きに対応できるよう、全世界をつなぐネットワークを活用して応えて参ります。


MESSAGE 航空機の未来のために

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 航空機産業のお客様へNo.1ソリューションを提供していくことを目指し航空宇宙部を組織しましたが、本年10月で4年が経過いたしました。この間、多くのお客様のプロジェクトに参画させていただき、お客様の製造ラインの生産性向上や加工費削減のための技術的なサポート、その他各種ツーリングに対するご提案などを行って参りました。超耐熱合金加工や、CFRP をはじめとする複合材料の加工など、航空機部品ならではの高難易度テーマに取り組み、少しずつではありますが、お客様に対してご満足いただけるソリューションを提供できる体制が構築できつつあるのではないかと実感しています。

 航空機部品と言えば、やはり難削材を抜きには考えられません。三菱マテリアルの難削材加工への取組みの歴史は長く、これまでも多くの難削材加工用工具を市場に投入してきました。特に航空機部品用材料の進化は早く、次々と新しい材料が開発されており、またその被削性も益々悪化する傾向にあるため、工具メーカーとしてそれに対応する新製品開発の手を緩めることはできません。この4年間でいくつかの新製品を発売することができましたが、さらにグレードアップさせ、お客様からより高い満足が得られる工具を世の中に投入できるよう挑戦していきます。

 新型コロナウイルスによって大打撃を受けている世界の製造業、航空宇宙産業はその中でも最も大きな影響を受けている産業の一つです。しかし乍ら、発表されている業界予測によりますと、回復するまでにある程度の時間は要するものの、その後はこれまで同様の伸びが期待されるとのことであり、今後も我々が注力していくマーケットであることに違いはありません。アフターコロナでは、世界中の空に、航空機に加えて「空飛ぶクルマ」も飛び回っている時代がやってきます。航空機部品加工で培った技術が生かされる裾野が広がっていくことから、三菱マテリアルはこれからも航空宇宙産業に向き合い、この分野の発展に貢献し続けていきます。

三菱マテリアル株式会社
加工事業カンパニー航空宇宙部長
明石 洋一

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