CUTTING EDGE

歯車加工のあり方を一新する。スカイビング加工技術

歯車の生産現場を変える次世代の加工技術

精密工具製造部 開発設計グループ 乗越 博之

 近年、ハイブリッド車やEVの増加に伴い、自動車動力源の変化が始まっています。動力伝達系の構造が変わっても、遊星歯車機構をはじめとする歯車部品は依然として重要な位置を占めています。自動車の電動化により静音化が進む結果、歯車は騒音源として注目され、質の向上を求められるようになるでしょう。ポイントは軽量化、高精度化、高剛性化です。

 こうした今後の変化を踏まえて、新たな歯車加工法として期待されているのが、スカイビング加工です。歯車加工については従来、内歯用としてギアシェーパ加工とブローチ加工、外歯用にはホブ切り加工が主に使われてきました。スカイビングは内歯・外歯いずれの加工においても、従来の加工法を代替する可能性を秘めています。

 スカイビング加工の原理は、約1世紀前にドイツで考案され、1970年代以降は日本でも検討されるようになりました。ただ当時は、工作機械の剛性不足により実現できなかったのです。ところが近年の技術進歩に伴い、再び研究開発が盛んに行われるようになっています。

 そもそもSkiveとは「薄く剥ぐ」こと、スカイビング加工の原理は次のようになります。

・ワークに対して工具を斜めにセッティングし、ワークの回転軸と工具の回転軸の間に軸交差角を設けます。

・ワークと工具を同期して高速回転させることにより接触点ですべりが発生します。このすべりにより、歯の溝をそぎとるように歯車を形成します。


スカイビング加工のメリットと可能性

 一連のプロセスによりスカイビング加工は、従来の加工法にはなかったメリットを実現します。例えば、止まり穴形状内歯車などブローチ加工では作成不可能な形状の内歯車をつくれます。さらにクラウニングやホローなどの歯筋の精度修正、歯厚や大径の切り込みの調整なども可能です。

 ギアシェーパ加工が往復運動による加工であり、往復動作の半分は加工に使われない時間となるのに対して、スカイビング加工は回転運動による連続的な切削であるため、生産効率が高まります。また、スカイビング加工はギアシェーパ加工よりも加工時の振動が小さいため、加工の精度向上も実現します。

 ブローチ、ピニオン(ギアシェーパ)、ホブとスカイビングの加工についての現時点での性能比較は図のようになります。

 ただスカイビング加工は、専用機ではなく複合旋盤やマシニングセンタなどでの加工が可能なため、生産現場を一変させる可能性を秘めています。ホブやブローチによる歯車加工では、それぞれの専用機が必要ですが、汎用機で使えるスカイビングなら加工工程の大幅な集約が可能です。
cut_vol08_04_ja.png

超硬合金素材により工具の長寿命化を目指す

 スカイビング加工の普及には、加工精度や生産性の向上、さらに工具の長寿命化が重要な課題です。

 軸交差角を大きく取れば、切削速度が上がります。ワークとの干渉に注意しながら、生産性を向上させるべくバランスを見て設計を行っております。

 スカイビング加工では、加工中にすくい角が変化するため、どうしても切削抵抗が大きい部分が生じ、工具寿命が短くなりがちです。

 寿命問題を解消するため現時点で当社が提案している工具が、ホブやピニオンカッタですでに実績のある高速加工用「KHAZ+GV40」です。KHAZは、素材である高合金粉末ハイス特有の微細な高硬度炭化物がもたらす優れた耐摩耗性が特長です。さらに炭化物量を最適化し、耐チッピング性が飛躍的に向上しています。

 一方では今後を見据えて、工具材質への超硬合金素材採用を研究しています。ハイス素材を超硬合金素材に代えれば、大幅に長寿命化できる可能性があります。併せてコーティング材も検討し、さらなる長寿命化も試行しています。同時に小径の歯車対応や精度の向上にも取り組んでいます。

 超硬素材のスカイビングカッタが実現すれば、熱処理後の加工が視野に入ってきます。研削加工で行っている熱処理後の仕上げ加工をスカイビングで行ったり、歯切りから仕上げまでを熱処理後に行ったりと、工具集約・工程集約の可能性が広がってきます。

 当社にはこれまで培ってきたシェービングカッタの設計・解析技術と、ピニオンカッタの製造技術の蓄積があります。これら工具設計と製造に関するノウハウに加えて、私自身の経験もフルに活用し、革新的な超硬スカイビング開発に挑戦しています。

cut_vol08_05_ja.png
トップページへ