FOCUS on PERFORMANCE

三菱自動車

技術革新へ共に切磋琢磨し続けてきた
三菱マテリアルとのものづくりの絆

 日本の産業をけん引し続けてきた自動車産業。いまだ、新興国の需要を中心に成長傾向が続き、また、電気自動車を始め、新たな技術革新も加速している。そんな自動車業界で、常により良い車づくりへの挑戦を続けてきた「三菱自動車工業株式会社」。その歴史の背景には、約50年にも及ぶ三菱マテリアルとの技術提携の歴史があった。今号では、三菱自動車工業 パワートレイン製作所 京都工場を訪れ、加工技術の開発やグローバル展開などにおける両社の連携と三菱マテリアルの貢献について伺った。

PART1 三菱自動車と三菱マテリアルの歩み

世界販売を拡げ進化を続ける三菱自動車

 世界の観光都市ランキング1位にも選ばれている、日本の歴史文化を今に遺す古都、京都。その入り口である京都駅から、車で約15分。市街地の中に、突然現れる広大な施設。それが、三菱自動車工業株式会社 パワートレイン製作所京都工場です。三菱自動車は、1917年三菱A型の生産を始め、パジェロ、ランサーエボリューションなど、日本、世界の多くの人々に愛される自動車づくりを続けてきました。近年では、「Drive@earth」をテーマに、地球と共生しながら、地球を心おきなく楽しむ走りの提供を目指し、各国で環境規制が厳しくなる中、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の世界販売にも大きく力を入れています。そんなさまざまな新技術の粋が集約される自動車産業。その中でも、製造技術の発展を支え続けてきたのは、日本が誇る世界最高水準の加工技術であったと言えます。そして、この三菱自動車の加工技術において進化をもたらしてきた背景には、加工技術専門集団である「工具技術連絡会」の存在がありました。
 これは、さかのぼること半世紀前。1966年に創設された、三菱自動車グループ各社と三菱マテリアル各部署から選抜された技術者が集い、自動車産業における切削技術の向上を図る技術交流を行う研究会です。「ものづくりに夢を」のスローガンのもと、毎年選抜メンバーが招集され、定期的な技術交流を重ねたのち、一年に一度、全メンバーが集い、加工技術改善活動の成果を共有する発表会を設けています。もちろん企業間を超えた活動による技術交流の活性化が主目的ではありますが、若手エンジニアも多く参加するこの会は、将来を担う次世代の技術者育成と加工技術の伝承の場をも担っています。発足から半世紀にわたるこの取り組みは、これまで約420人ものエンジニアが参加し、多様な分野における約550件もの技術発表が行われてきました。エンジニアたちの熱い想いと、ユーザーニーズとメーカーシーズが重なり合うこの場で、三菱自動車を支える数々の新工具が生まれ、高度なレベルのライン構築を支えてきたのです。今回、この「工具技術連絡会」に参加してきた三菱自動車、三菱マテリアル両社のメンバーに、その歴史と成果を語り合ってもらいました。

生産ラインのコアを支えてきた工具技術連絡会

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(左)清水 浩 三菱自動車エンジニアリング(株)
(中 写真右)荻野 隆 三菱自動車工業(株)
(右)西田 眞 三菱自動車エンジニアリング(株)

三菱自動車(以下、自動車)清水氏:
工具技術連絡会に私が携わってから、もう約40年近くになります。このメンバーの中では、一番の古株に当たりますね。古くは国産化していた三菱ジープのエンジンなどに携わってきました。工具技術連絡会の歴史を大きく振り返ってみると、特にクローズアップされたのは低燃費規制への対応で、各自動車メーカーはコストダウンの要求はもちろんのこと、車の軽量化も進んでいった時代を経験してきました。
自動車 荻野氏:
確かにそうです。エンジンが高性能化されるにしたがって、エンジン部品はより強度の高い難削材に変わってきました。そうなると工具も性能をアップしたものじゃないと歯が立たない。そこからの歩みを振り返ると、常に被削材と工具の進化の戦いでしたね。新たな被削材に対応するための工具が、製造コストが上がる、プリセットしにくい、寸法調整に時間がかかるなど、ネガティブ要素があれば、それは良い工具とは言えません。工具技術連絡会は、そんな妥協を許さないエンジニア同士の魂のぶつかり合いの歩みでもあったと思います。現在、この工具技術連絡会は若手エンジニアの育成にも注力しており、いわば自身の技術力を客観的に図れる登竜門的な位置付けとして、中堅エンジニアたちも一緒になって、互いに刺激し合いながら技術を磨く組織に成長してきたと思います。
自動車 清水氏:
技術の活性化はもちろん、互いの持つ最新情報の共有にも大きな意義がありました。そこから新たな発想や発見が数多く生まれてきたのです。三菱自動車にとって、自動車製作のコア部分が結集する組織であり、その将来をも見据えた組織と言えるでしょう。
自動車 荻野氏:
パワートレイン製作所(京都)は、三菱自動車のエンジンのマザー工場と言えます。ピーク時には約5,000人もの従業員が日夜生産に携わっており、この京都の街中で、世界一と自負する生産ラインが稼働していたのです。ですから、これらの製作所を支える工具技術連絡会には高度なレベルが求められ、そのメンバーに選ばれた若手は非常に名誉なことでした。
三菱マテリアル(以下、マテリアル)瀧口:
例えば、三菱マテリアルから選出されるのは毎年5名ほどですから、まさに誉れ、と言ってもいい。そうして新陳代謝をしながら50年もの歴史を刻んできたのですね。
自動車 宇野氏:
はい。若手から見ても工具技術連絡会に携われるのは“花形”というイメージが強く、まさにエースの人しか入れないという印象でした。50年の歴史の中には諸先輩から受け継がれ培われた技術力が確実に活かされていると思います。
自動車 西田氏:
現在、私は工具技術連絡会の量産チームリーダーをさせていただいているのですが、両社のメンバーがお互いのニーズとシーズを持ち寄り、共通の目標を掲げ、議論を重ねていくことでとても良い技術交流の場になっていると感じています。また、約25年前には、三菱マテリアルさんから三菱自動車に駐在し業務を行っていただいていたという歴史があるのですが、この工具技術連絡会の継続が一つのきっかけにもなり、今年度は約25年ぶりに三菱マテリアルさんから宇野さんに出向していただくことができました。工具技術連絡会は、人材交流にもつながっています。

世界一多忙なラインを支える工具を生み出すために

マテリアル 瀧口:
私が関わらせていただいたのは、ちょうどV型6気筒のエンジンが始まった頃。1987年ぐらいですかね。
マテリアル 北村:
V6は当時クライスラー社に供給していたエンジンで、この京都の地で1ライン月産5万台をつくる、まさに世界一の超多忙なラインだったのではないでしょうか。
マテリアル 瀧口:
月産5万台ですからね。こんな過酷な状況で、三菱マテリアルの工具が使われていたわけですから、何か一つ問題が発生すると、ラインが止まってしまうという危機感に加え、とにかく高能率に加工する手段を考えなければならなかった。それには、日頃から課題を共有し合っていた工具技術連絡会のノウハウが大いに役立っていたのです。
マテリアル 北村:
また、どんどん生産しなければ追いつかないので、ツール交換の時間短縮も求められていました。
自動車 清水氏:
1987年かな、ボタンを押せば瞬時で工具交換ができるシステムを作り上げたのですが、これは機械設計者とタイアップしながら開発したのです。ここに、多様な知識が集まる、工具技術連絡会の強みがあるんですね。当時の技術的改善提案のテーマに「Quick change化への飽くなき追究」と書かれています。正面フライスのバネクランプ、油圧クランプ機構の開発で、工具交換時間は1分以内、スパナや工具交換用具は一切不要となりました。
一同:
おおっ ! 懐かしい !
マテリアル 瀧口:
当時は今のようなマシニングセンタがなく、工具の自動交換ができなかった。それを自動交換ができる一歩手前まですでにやっていたんですから、エンジンを速やかに量産するための知恵をこの工具技術連絡会が絞り出していたと言っていい。
自動車 荻野氏:
今、まさにその時の主要メンバーがこの席に着いており、大変懐かしく当時の記憶が蘇ってきます。

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(左)宇野 大哉 三菱自動車エンジニアリング(株)
(中)北村 敦 三菱マテリアル(株) 加工事業カンパニー
(右)瀧口 正治 三菱マテリアル(株) 加工事業カンパニー

自動車 清水氏:
携わってきた技術的改善提案はこのパジェロカラーが表紙の『THE TOOLING』にまとまっています。このカラーも今思えば、こだわりの一つでしたね(笑)
マテリアル 北村:
本当に全世界どこを探してもこんな過酷なラインはなかった。この歴史はすごいと思っています。三菱マテリアルの工具は世界一多忙で過酷なラインで使っていただいている世界一の工具だという大きな自信にもつながっていました。
自動車 清水氏:
でもね、いいことばかりじゃなかった。メンテナンスも大変でした。ラインが止まるのが夏休みと年末年始しかない。ラインが休みの間、三菱マテリアルの開発したものがどうなったのか、分解し、調べに調べデータを蓄積していったのです。また、随時、ツーリングセンタと共同してカッター基準面のくずれや刃ブレの変化量を点検したり、経年による加工面精度も調査しました。
マテリアル 北村:
もちろん我々も一緒になって参加しました。20代の青春時代の夏休みと年末年始をメンテナンスに捧げた思い出があります(笑)
自動車 清水氏:
持論は、設計がなんぼ実力があっても70点。あと、助けてくれたのは現場の製造の皆さんでした。ものをつくることに携わる人は、ものづくりを大切にする精神があるんですね。それは今も昔も変わっていません。
マテリアル 瀧口:
現場を知っているからこそ設計に活かされているんでしょうね。
マテリアル 北村:
今現在も三菱マテリアルが世界の自動車産業向けに販売している工具の原点は、全てこの工具技術連絡会の歴史にあると思っています。工具が原因で月産5万台のラインが止まるとなったら大変ですからね。
自動車 宇野氏:
今でもラインで起きたトラブルなどは、改善提案書に書かれてありますが、これも課題を共有し、解決するプロセスに至るまで、諸先輩方から脈々とつながっているものです。これからも工具技術連絡会の活動を通じて、自動車産業を牽引するものづくりに貢献していきたいと思っています。

多様な成果を生み出す工具技術連絡会

 「工具技術連絡会」は、1993年から専門チーム活動として量産加工・金型加工チームを発足させ、その活動を深化させています。この50年の中で、切削工具も大きな飛躍を遂げてきました。その時代ごとに工具技術連絡会は新工具の開発にも多くの成果を挙げ、超硬のUTi20Tにコーティングしたものから、多層コーティング(CVD)、CBNなどの超高圧工具も登場しました。同時に、工具費用低減、生産性向上、量産加工用工具、金型加工用工具、切りくず処理改善など、さらなる技術発展のため新たなテーマを常に掲げ、活動を続けています。ここで培われた技術は、三菱自動車の製造ラインを支えるとともに、ユーザーに最も近い場所での技術研究は三菱マテリアルのノウハウとなり、さまざまな産業への加工提案に活かされています。

PART2 各社協業による次世代工具の開発

車の心臓部の加工方法を一新する

 自動車部品における機械加工は、まさに自動車の性能に直結し、これらの技術は自動車の発展とともに日々進化しています。特に自動車の心臓であるエンジン。エンジンには爆発力を支えるシリンダーがあり、この爆発力を運動エネルギーに変えるピストンが動く部分は材料も高強度に設計されています。この高強度で難削材であるシリンダーをいかに削るかが、シリンダーブロックの生産性を高める鍵となっています。さらなる「高品質、高能率、低コスト」を実現する加工方法とは何か。三菱自動車と三菱マテリアルのタッグを組んだ挑戦が始まりました。たどり着いたのは、シリンダー中仕上げレス加工を実現する次世代工具の開発。この工具開発に関わった三菱自動車の後藤氏、三菱自動車エンジニアリングの寺坂氏、そして三菱マテリアルの古林、作山、山田の5人にその背景と取り組みを伺いました。

中仕上げレス加工を実現するために

自動車 寺坂氏:
当たり前のことですが、自動車部品の機械加工では、常にさまざまな高い要求があります。今回の工具開発の背景として特に課題と感じていたのが、燃費向上のために求められる高精度なシリンダー加工にかかるコストでした。シリンダーブロックの加工で使用する切削工具のうち、工具費用の内訳で多くを占めているのがこのシリンダー加工なのです。まず活動に際し、生産ラインを一貫して、問題点の明確化から着手していきました。
マテリアル 古林:
それが今から4年ほど前のことですね。三菱自動車様の取り組みを伺って、我々も協力して改善点をあぶり出し、改善策を提案したいと工具技術連絡会で申し出たのです。
自動車 後藤氏:
現状のシリンダーには、荒、中仕上げ、そして仕上げの計3工程のボーリング加工を行っていました。今回の開発計画では、これらの工程を2工程へ短縮させ“中仕上げレス加工”の実現を目指しました。ただそうなると荒ボーリング加工後の品質向上が必須条件だったのです。
マテリアル 作山:
荒ボーリング加工の面粗度を向上させるために“さらい刃”を取り入れる提案をしました。“さらい刃”とは、加工した後をさらにカンナで削るようなイメージで面の質を上げる刃先です。まさに荒ボーリング工具にはこれが有効だと判断したのです。
自動車 寺坂氏:
現在、一般的なマシニングセンタの2倍ほどの主軸出力が発揮できる設備で荒ボーリング加工をしています。“さらい刃”を使うと、機械の出力がものすごく必要になってきますが、この設備なら提案してもらった切削工具の性能を最大限引き出せると感じたのです。
マテリアル 古林:
約半年の準備の末、何とかなりそうだと私も直感しました。ついに想いはつながったと胸にこみ上げてくるものがありました。

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(左 写真右)寺坂 忠 三菱自動車エンジニアリング(株)
(左 写真左)後藤 一 三菱自動車工業(株)
(中 写真右)古林 浩靖 三菱マテリアル(株) 加工事業カンパニー
(右)山田 基樹 三菱マテリアル(株) 加工事業カンパニー

想いはつながる、そして形になる

マテリアル 作山:
「高品質、高能率、低コスト」さらに、工程を短縮するという全てのニーズに応えるため、最大限の工夫を盛り込みました。荒ボーリングで中仕上げボーリングに匹敵する面粗度を出すために、さまざまな“さらい刃”の形を検討しました。そして切削抵抗を低減させるためにダブルポジブレーカーを採用し新開発のインサートを生み出しました。さらに、穴の円筒形を安定して加工するためにインサートの配置数、配置角度を適正にした荒ボーリング工具を開発しました。
マテリアル 山田:
インサートはすくいの角度を付けるほど切れ味は良くなるのですが、反面鋭利になると刃先が欠けやすくなります。それらを回避して剛性を持たせて高送りを可能にするために、表裏ですくい面の形状を60°位相をずらせて、切れ刃直下が受け面になるという工夫が施されています。もともとのインサートは四角形でコーナーは4つ使えますが、新開発したものは六角形でコーナーを6つ使えることで低コストにも寄与することができました。
自動車 後藤氏:
従来よりもさらに難削となる荒ボーリング加工に対し、取代と加工条件の設定が最大の難所でした。シリンダーの位置精度のデータを積み上げ、設備の実力を考慮した取代量を設定。また、従来では切込みと送りの二次元的な考えで加工条件を設定しましたが、今回新たに速度となる時間軸を加え、三次元の空間領域を絞り込みました。実際に試験加工を行い、この空間領域の中から「高品質、高能率、低コスト」となる“おいしいポイント”を見つけたのです。
マテリアル 古林:
生産にあたっては約2万穴ほど加工して評価しました。工具寿命も従来比で6倍、加工能率においては10%短縮することができました。この結果があるからこそ、自信を持ってPRすることができるのです。

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(左)作山 徹 三菱マテリアル(株) 加工事業カンパニー

自動車 寺坂氏:
機械の加工能率が10%上がった。たった10%と思うかもしれませんが、場合によっては数千万円の機械1台が不要になるほどの効果が得られるものなんですよ。
マテリアル 山田:
この工具は4年の歳月を経て改良を繰り返しながら、やっと納得がいく成果にたどり着きました。まさに次世代を担う工具の一つではないかと思っています。
マテリアル 作山:
我々の製造した工具が三菱自動車様でどの様に使われているか、肌身を持って感じることができた良い機会でした。開発の立場として、ユーザーとメーカー双方の満足が得られたことは本当に嬉しいこと。それぞれの立場はありますが、結局は人と人とのつながりが大切で、そうして得られた成果だと思っています。
自動車 後藤氏:
これからも今回得た技術や手法を展開したいと思います。さらなるコスト削減への追究や未来をゆく工具、例えば切りくずを制御する技術、バリレス工具など、切削工具の研究で付加価値を生む可能性は無限にあると思います。
自動車 寺坂氏:
切削工具の高性能化は重要で我々は常に求めています。ただ、いかにこの「高品質、高能率、低コスト」の三位一体を最適化させるのかが重要なのです。我々はもちろん三菱マテリアルさんが一緒になって、新しいアイデアを模索し、具現化するための努力を惜しまず続けてくれたことが今回の成果につながったと感じています。ここで培われた高性能な工具は他の産業にもきっと貢献することができるでしょう。

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PART3 グローバル展開に向けた三菱マテリアルとの連携

タイでの新工場設立への挑戦

 現在、アジア地域への生産能力拡大に注力している三菱自動車工業。同社のタイにおけるミツビシ・モータース・タイランドが新たにエンジン工場を建設したのは2008年のこと。日本とは勝手の違う海外で新しいラインを立ち上げる― その苦労は並々ならぬものがありました。ラインの立ち上げに携わった三菱自動車工業 京都工作部の真子氏は、「私が携わったのはタイでエンジンから車体まで一括生産しているミラージュに載せる、エンジン加工ラインの2012年の立ち上げでした。最近は現地でもさまざまなものが仕入れやすくなっていますが、当時はなかなかものが手に入らない。当然ですが日本とは違う国ですし、ものを発注するにも、何から何まで戸惑いの連続でした」と当時を振り返ります。その国・土地に合ったベストな生産ラインを考える一方、工法を変えると品質面でリスクも伴う。そこで、真子氏と同じくラインの立ち上げに携わった三菱自動車工業 生産技術本部の岡氏は、エンジンをつくる基幹工場となっている「三菱自動車工業パワートレイン製作所 京都工場のラインをそっくりそのまま完全コピーをしたい」という想いを持っていました。そのメリットを岡氏は、「立ち上げの時に新しい工法を採用したことによるリスクも低減できる上、日本で品質確保された最新の製造ラインをそのまま導入できる」と考えたと語ります。

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海外展開サポートの専門集団による対応

 ちょうど時期を同じくして、東南アジア地域の自動車部品製造の中心となっているタイで、さらなる超硬工具の需要拡大を見込んでいたのが三菱マテリアルでした。「現地での、きめ細かい顧客サービス体制がタイに必要になる。我々も主要需要国に軸足を据えた体制を構築していく方針でした」と三菱マテリアル 北村は言います。三菱マテリアルでは、製品提供だけではなく、拡大するグローバルマーケットに対応すべく、培われた技術や経験、豊富な人材の積極的な国際展開を推進しています。この取り組みを形にした部署が、2013年に新設された海外展開サポートの専門集団であるグローバルキーアカウント部です。この部署について北村は「グローバルキーアカウント部は、顧客が海外に進出する際、一緒について行き、現地が落ち着くまでサポートする役目を担います。顧客もグローバルに生産体制を強化し最適化を図っている中で、ベストなソリューションとサービスを提供する部署なのです。お客様と一緒になって新たな価値を創造していく仕組みをつくり、競争力を一緒に強化していく狙いがあるのです」と話します。そこで、この三菱自動車工業におけるタイでのエンジン工場立ち上げについても、グローバルキーアカウント部が参画することになったのです。「立ち上げ時は常にピリピリしており、何か問題が起きるとその解決によりスピード感が求められていました。その時、すぐにマテリアルさんに来てもらい、ラインの状況やワークが実際どうなっているのかも見ていただいた。私たちは『現場』、『現物』、『現実』の『三現主義』と呼んでいますが、それを一緒になって取り組み、解決していただいたことに、感謝しています」と岡氏は当時のことを振り返ります。

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(左)左から、三菱マテリアル 古林、北村、山田
(中)岡 芳樹 三菱自動車工業(株)
(右)真子 俊夫 三菱自動車工業(株)

どんな困難にも、共に立ち向かい続けること

 従来加工ラインがなかったところに加工ラインを入れるということは、当然、ものをつくる人員が必要となります。そのため、切削工具を使ってマシンの操作をする人材の育成も急務。特に、日本では加工における緻密なコスト計算が当たり前だが、それらの重要性を現地で根付かせるために、立ち上げメンバーは相当の汗を流したと言います。真子氏は「まずは品質が最優先。昨日まで全然違う分野で働いていた方が、ある日突然、加工ラインに配属されることになるのですから、しっかり指導をして覚えていただかなくてはなりません。そこでマテリアルさんとも色々と情報交換をしながら加工に関する必要な知識を丁寧に教えてもらい、とても助かりました」と三菱マテリアルとの関わりを話すと、それを受けた三菱マテリアル 山田は、「日本で評判の良いものを速やかに現地に伝え、加工に関する認識を速やかにお客様と共有していく努力をしていかないと、どこかにズレが生じてしまいます。我々も国内外の連携を密に取って、お客様のお困りごとに素早く対応できるよう注力していきます」との姿勢を示します。同じく三菱マテリアルの古林も「お客様が望んでいるものをいち早く準備して提供できるよう努力しています。どんなに困難な課題もお客様と一緒に乗り越え克服するんだ、という気持ちが一番大切だと思っています」と力強く語ります。常に顧客とともに高め合っていきたい― そんな想いが両社を強くつなぎとめているのです。今回の取材の中で、顧客という単純な関係を超え、互いにものづくりのプロフェッショナルとして『ベストな加工』を追い求め続ける姿が色濃く映しだされていました。三菱マテリアルは、これからも工具の特性を知り尽くしているからこそできる高度な加工技術を持って地球全体をフィールドに、顧客の『ベストな加工』に貢献し続けていきます。

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Mitsubishi Motors Global Website : http://www.mitsubishi-motors.com/

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