EYE on MARKET

特集 空へ

AEROSPACE INDUSTRY
航空機産業と難削材加工

初飛行に向けて整備中の日本国産旅客機MRJ

今、世界の空は忙しい

インターネット網の整備により、情報は時空を超えてリアルタイムに全世界へと駆け巡る世の中となりました。しかし、人と物の移動には今後も物理的な時間を要し、その主役を担うのは航空機と言えるでしょう。1995年以降、2度の世界的不況を乗り越え、航空輸送(有償旅客距離換算)は年率5%の成長を続けてきました。約15年ごとに倍増しており、次の15年間も、特にアジア圏の発展成長がけん引し、成長は継続すると予測されています。はるか高空より欧州を見下ろせば、今も津々浦々で民間航空機がひしめき合っています。今、そして今後も、世界の空は多忙を極めていくでしょう。

地球と人に優しい新型ジェット旅客機

大陸から大陸へ、都市から都市へ、都市から地方へとニーズに応じて大中小さまざまな旅客機が使用されています。しかし、昨今、地球温暖化など環境破壊への対応が課題となり、大きな変革期が訪れつつあります。ボーイング社の787やエアバス社のA350といった新型ジェット旅客機では、チタン合金やCFRP(炭素繊維強化プラスチック)といった、軽くて強い材料の使用比率を高め、機体の軽量化を推進。さらに、燃料消費量を抑え、かつ低騒音の新しいジェットエンジンを採用することで、環境負荷の大幅な低減を実現しています。

日本に目を転じれば、低運航コストと居住性に優れた三菱航空機株式会社の新型ジェット旅客機MRJがいよいよ初飛行を迎えます。今、世界中のエアラインが、地球と人に優しい新型ジェット旅客機の導入を推進しているのです。

世界の航空機輸送は、今後15年で倍増する!

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航空機がひしめき合う欧州の空

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ジェット旅客機の構成材料と切削加工

ジェット旅客機の部品数は約300~ 600万点と言われ、特に構造部品の多くは切削加工によって製作されています。軽くて強い材料が多用され、ジェットエンジンには高温・高圧の燃焼に耐える特殊な合金が使われています。

今、これらの部品を高能率、高精度、高品位に加工するためには、各々の材料に特化した切削工具が必要不可欠となっています。

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INCONEL®は登録商標です。
WAPALOY®は登録商標です。

1.アルミニウム合金:時速300km/hの超高速高能率加工

機体の外板やリブ(骨組み)の多くは超々ジュラルミン(A7075)が一般的に使用されています。大きなブロック材から薄い部品を削り出し、素材の90%以上を切りくずにするためには、1分1秒を争う高能率加工が不可欠。近年では切削速度5,000m/min(時速300km/h)で、1分間当たりの切りくず排出量10,000cm3/minといった超高速高能率加工が実用化されています。

2.チタン合金:使用比率が増加し高能率加工が課題

チタンは、400℃以下の環境において金属材料の中で最も高い比強度(単位比重当たりの引張り強さ)を備え、軽くて強く、さらに錆びにくい特性を有しています。人工関節などにも使用されるチタン合金Ti-6Al-4Vは、機体のドア周りや翼の取付部、ランディングギア(降着装置)など、高い強度が必要な個所で使用され、その比率は新型ジェット旅客機で増加し続けています。熱伝導性が低く切削熱が刃先に集中するため、高能率加工が難しい材料と言えるでしょう。

3.CFRP:21世紀を代表する新素材

CFRPは鉄の10倍の比強度(単位比重当たりの引張り強さ)を有する、軽くて強く、錆びない材料で、21世紀から急速に普及しました。航空機の胴体などの大型構造物は、束ねた炭素繊維をプラスチックに含浸させたシートを円筒状に積層して真空中で加熱することにより、一体成形が可能となっています。極めて高強度なため被削性が悪く、ダイヤモンド工具またはダイヤモンドコーティングを施した工具を用いての切削加工が必要となります。

4.超耐熱合金:過酷な環境に耐える高機能金属材料

ジェットエンジンの中で、主に燃焼・排気といった部位に使用される超耐熱合金は、常温から1,000℃前後の高温まで繰り返し使用される過酷な環境に耐える高機能金属材料です。ニッケルをベースとしたINCONEL®やWASPALOY®などが使用されています。高温でも強度低下しないので被削性が悪く、また高いレベルの加工品質が要求されるため量産加工前に十分な検証が必要です。

ニッポンから世界へ航空機ビジネスに懸ける熱き想い

三菱マテリアルは2001年より本格的に航空機産業向け切削工具の開発に着手しました。しかし、先行する欧米メーカーの壁は厚く、アプローチの歴史は試行錯誤の連続。艱難辛苦の末、現在ではさまざまなアプリケーションに適した高性能切削工具を取りそろえ、日本、米国、欧州、アジアの10カ国に約20名の専任者を配し、開発進行中の新型ジェット旅客機のプロジェクトに参画できるレベルまで成長を遂げています。現在は経験豊かな2人のマネージャーが、ニッポンから世界へと航空機ビジネスをけん引しています。

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総合力で勝負

航空機ビジネスを統括する伊藤正昭は、11年間にわたる工作機械メーカーへの勤務や、業界17社共同で取り組んだ複合加工機用ツーリングシステムのISO(国際規格)化などの経験により、切削加工に対し常に総合的な観点でアプローチを行っています。そこで培われた技術は航空機メーカーのみならず、工作機械メーカー、大学・研究機関とのディスカッションや問題解決に遺憾なく発揮され、「難削材の高能率加工は切削工具メーカー単体では解決できない領域へ達している」と伊藤は言います。近年は、航空機ビジネスのさらなる推進に向け、世界的なパートナーシップの構築を戦略的に進めており、2014年春には世界最高峰の研究機関である英国のAMRC(Advanced Manufacturing Research Centre)への加盟を実現。AMRCでは世界中の大手航空機関連メーカーから寄せられた課題について研究しており、早速三菱マテリアルのソリッドエンドミルがチタン合金の加工において高い評価を受けています。現在は、世界各地の専任者や国内の開発部隊と密接な連携を取り、熱い想いとともに次世代の切削加工を担う新商品の企画立案を続けています。

難削材加工のエキスパート

エンジニアリングマネージャーの長野剛は、入社以来20年間、切削加工技術をひたすら追求し続けてきました。社内の開発試験、ユーザーからの依頼試験、そして新しい加工技術の開発を自ら手がけ、時には世界各国の展示会においてその一端を実演として披露してきました。アプリケーションエンジニアに転身後は、その経験に裏打ちされた豊富な切削加工技術をバックボーンに、航空機メーカーや工作機械メーカーから厚い信頼を獲得。日本・アジアを中心としてアグレッシブに活動を続け、三菱マテリアルのネットワークを駆使しながら、難削材加工について実戦的な技術支援と問題解決に腐心しています。また、当社の技術をアピールするため、日本、北米、欧州、中国の工作機械および航空機関連の展示会への参画を推進。2014年11月に珠海で開催された中国最大の国際航空展では、日本の切削工具メーカーとして唯一出展し、多くの来場者から注目を集めることに成功しています。

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AMRCにて民間部門長(共同創設者)のAdrian Allen氏へ加盟契約書提出

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JIMTOF2014(第27回日本国際工作機械見本市)三菱マテリアルブース内の航空機産業展示の様子

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珠海(中国)航空展ブースにて中国メディアへの説明の様子

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