EYE on MARKET

写真提供:三菱自動車工業株式会社

「低燃費技術」と「加工技術」の進化

世界の約6人に1台の割合で自動車を所有する時代に

 ドイツでガソリンエンジンを搭載した自動車が登場してから約150年。世界各国で保有されている自動車の台数は、2013年に11億台を突破し、約72億人の世界人口に対し、6.2人に1台の割合で普及していることになります。世界の自動車生産量は、2014年度には8,975万台に上り、中国、アメリカなどの巨大市場での生産増がさらに続いています。

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Motor vehicle produced by country in 2013
出典:Khassen Y, Wikipedia。
国際自動車工業会(OICA:Organisation Internationale des Constructeurs d’Automobiles)などの資料を元に算出。

爆発的な普及は環境問題へ

 黎明期には想像できなかったこの世界規模での自動車の普及はまた、環境問題という新たな課題を生じさせることとなりました。米国カリフォルニア州や日本では1960年代に排出ガス規制が設けられ、自動車メーカー各社はこれを達成するために、さまざまな環境対策技術の開発を推し進めてきました。現在では、従来からの大気汚染対策として排出ガス中の有害物質を減らすことと同時に、温室効果ガスである二酸化炭素の排出低減達成も求められています。この対策を進めるにあたって、燃料消費も抑制することになり、消費者にとってのメリットも生み出す結果となりました。


出展:The International Council on Clean Transportationが各国の燃費基準値を単純に換算したもの。欧州、米国について、燃費測定モードや緩和措置、車種構成の差異を考慮し単純計算で補正を行うと、欧州は21.1km/ l (2021年基準、経産省試算の参考値)、米国は16.5km/ l (2020年基準、経産省試算の参考値)となる。日本の 2010年規制(2015年以降と測定モードが違うため参考値)は、経産省追記。

進化する 燃費技術

 今日の低燃費技術の代表例としては、ガソリン・ディーゼルでは、共に従来よりも小排気量化したダウンサイズエンジンに直噴とターボチャージャーを組み合せたもの、自然吸気ガソリンエンジンの圧縮比を極限まで高めたもの、エンジンとモーターの組み合せによるハイブリッドシステムなどがあります。また、日本独自の規格としての軽自動車は、消費者から低価格、低ランニングコストが強く求められてきました。そのため、燃費向上技術の開発には最新のものも含めたあらる技術が投入され、普通自動車を上回る性能を実現しており、実に30km/l*を遥かに超えるものも登場しています。

電気自動車の登場

さまざまな車種が登場する電気自動車(写真は、三菱自動車i-MiEV)

 さらにガソリンを消費しない電気自動車も浸透しはじめています。これには充電式のものと車両内で電気を発生させる燃料電池(水素と酸素で発電、結果水を排出する)搭載車、電池のほかにエンジンを発電機として搭載するものがあります。発電用エンジンはレンジエクステンダーとも呼ばれ、レシプロ、ロータリー、タービンなど各種エンジンが実用化、または提案されています。発電専用ながら現状の給油インフラをそのまま利用できるため、電気自動車の普及に最も有用なシステムの一つとも言えます。レンジエクステンダーを搭載した車では、燃費60km/l超に達しているものもあります。

*:JC08モード燃費での測定

環境対応のための進化を続ける多様な技術

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i-MiEVの主要コンポーネント(システム構成図)

●駆動用バッテリーなどのEV化に必要な主要コンポーネントをすべて床下に搭載
 ・ベース車と変わらない室内空間や荷室スペースを確保
 ・高電圧配線を客室から隔離し、万全な安全性を担保
 ・車両の重心が低下し、優れた走りの実現に寄与
●小型高効率モーターを採用し、リヤに搭載(ベース車と同様の後輪駆動)
●大容量の駆動用バッテリーを搭載し、軽自動車として、日常ユースに十分な航続可能距離を実現

COLUMN PHEV技術

走行状況に応じて最適なモードに制御する“自分で発電する電気自動車”

「プラグインハイブリッドEVシステム」の仕組み

 三菱自動車が独自に開発した、電気自動車派生型の「プラグインハイブリッドEVシステム」は、住宅地や街中などの低・中速走行時には、主に駆動用バッテリーの電力により走行する「EV走行モード」になります。また、駆動用バッテリーの容量が低下した場合や力強い加速が必要な場合には、エンジンが自動的に始動して発電を開始し、モーターとバッテリーに電力を供給する「シリーズ走行モード」となります。さらに、高速走行時には、高回転域で効率の良いエンジンの駆動力を直接タイヤに伝え、モーターがアシストする「パラレル走行モード」になります。なお、減速時にはモーターを発電機とし、減速エネルギーを回生して駆動用バッテリーに充電します。

eye_machiningtechnologies_06.png アウトランダーPHEV(三菱自動車)

●電気自動車ベースのプラグインハイブリッドEVシステム
 ・十分なEV航続距離を確保するため、大容量バッテリーを床下中央に配置
 ・駆動用モーターを前後に配置した、ツインモーター式4WDを採用
 ・発電及び駆動に使用するエンジンをフロントに搭載
 ・モーターとエンジンの駆動力は、フロントトランスアクスルにより切り換え

■各コンポーネントの仕様

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低燃費技術と加工技術

 これら技術の実現には各種の生産技術の進歩が不可欠であり、金属部品加工の分野においても同様です。ターボチャージャーは決して新しい技術ではありませんが、タービンの動力源である高温の排気ガスに耐える金属材料を高能率に長時間加工できる切削工具の進歩によって効率の良いターボの生産が実現しました。また、かつての鋳鉄から軽量化のために、アルミが主流となっているシリンダブロックやシリンダヘッドを能率良く加工することで、低コスト生産が可能となっているのです。三菱マテリアルの切削工具事業は、その80年の歴史における当初から日本及び海外の自動車メーカーと密接に連携し、部品加工技術の進歩に関わってきています。
 これまで自動車の低燃費を支える技術を主に発動機の観点から紹介してきました。実際には、発動機と組み合わされる変速機、駆動装置、軽量車体、果ては潤滑油、低抵抗のタイヤや燃料そのものの改良まで、低燃費を実現する技術の基盤は裾野が極めて広いもの。しかしながら、発動機、変速機、駆動装置とこれを搭載し組み付ける車体は大半が金属でできているため、自動車がプラスチックや電機部品だけでできる日も来るかも知れませんがその日はまだまだ遠いでしょう。三菱マテリアルの切削工具は、機械加工を通じて自動車産業のさらなる発展にこれからも貢献していきます。

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高効率仕上げ切削用正面削りカッタ

写真提供:三菱自動車工業株式会社

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