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スター精密

(静岡県菊川市)

医療機器製造に適したスイス型自動旋盤を開発・製造し世界シェア約3割を誇る。

スター精密ユーザー自ら開発した、ユーザーのための自動旋盤

 スター精密株式会社の歴史は1950年、わずか6名の小さな部品加工工場から始まります。当初はスイスや国内メーカーの自動旋盤を用いて、時計の精密部品を製造していましたが、“より高品質な精密部品を製造するために、自動旋盤を自作せよ”という創業者の方針のもと、自社で使用する工作機械を製造。やがて他社からの注文も受け、“ユーザーがユーザーのためにつくった自動旋盤”をキャッチフレーズに量産を開始しました。

 「当社では、現在も自社でつくった工作機械を使って、さまざまな精密部品加工を請け負っています。その使い勝手を開発部にフィードバックし、新製品開発や既存製品改善につなげられるところが強みの一つです」と機械事業部営業部部長の増田文雄氏は話します。

 グローバル展開は1962年、イギリス向けに自動旋盤を輸出したことに端を発し、現在では欧米をはじめ、アジア各国で製造・販売・サービス体制を構築。代理店や販売店任せではなく、営業スタッフがユーザーを訪問し、導入前のビフォアサービスと導入後のアフターサービスを徹底しています。このようなきめ細やかな活動が評価され、同社のスイス型自動旋盤は、世界シェアの約3割を占め、この専門的な分野におけるリーディングカンパニーとしての地位を確立してきました。

 医療分野で見ると、同社のスイス型自動旋盤は、骨折治療用ボーンスクリューや歯科治療用インプラント(人工歯根)、関節用補助材料などの製造に使われています。このような細くて長い加工品はスイス型自動旋盤でないと加工が難しいため、必然的に同社の製品が選ばれているのです。「ボーンスクリューなどの医療機器は人体に入るため、血液適合性や耐食性など、高いハードルをクリアしなければなりません。素材はチタン合金をはじめとする難削材が中心で、異形状加工品も多く、非常に厳しい精度が求められます」と営業技術室室長の大関紀明氏は話します。

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(左から)スター精密株式会社 機械事業部 営業部 部長 増田 文雄氏, 同事業部 営業部 営業技術室 室長 大関 紀明氏, 同事業部 開発部 部長 鈴木 大亮氏

医療業界の切削加工に適した、優れた機械剛性を発揮

 このようなハイレベルな要求に、同社のスイス型自動旋盤は十二分に対応できる設計・仕様を有し、医療機器を製造するユーザーから高い評価を受けています。

 「当社はスイス型自動旋盤の開発にあたり、機械剛性にこだわっています。構造面では、通称“蟻溝”と呼ばれる台形のすべり面を配した“スラント型すべり案内面構造”を採用。この構造は固定部と移動部が面で接しており、切削点にボールねじ中心を近づけ、切削時のモーメント荷重を軽減させるものです。これにより切削抵抗などによる振動を抑制し、加工精度を向上します。特に切込みを大きく変えたときに加工精度を均一に保ち、安定的な加工精度を実現します」と開発部部長の鈴木大亮氏は強調します。

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スラント型すべり案内面構造の高剛性刃物台

 蟻溝構造の他にも、ノンガイドブッシュ仕様での加工時に主軸台にかかる切削負荷をすべり案内面で支持する“主軸筒すべり案内面構造”などの採用により、さらに機械剛性をアップ。その他、高精度加工を追究するために設計面で、さまざまな工夫を凝らしています。

 「例えば、インプラントの人工歯根(フィクスチャー)では、素材の中心にφ1.8で80mmという深穴加工を要望されることもあります。これを機械のメイン側で切削しようとすると長さに制約があるため、バック側のスピンドルに100mm程度の穴をあけられるアタッチメントを装着し、ツール選択によって有効ストロークを確保しています」と営業技術室室長の大関氏。口の中の傾斜した部分にインプラントを埋め込むアングルアバットメントの加工では、軸心に対して傾いた形状をつくるため、機械側にも傾斜面を加工できる刃物台を準備。熱変位を抑えるためにセンサーで熱の変動を実測・予測して動かす量を調整するなど独自の設計を施しています。「医療関係者が製造現場を見学にいらっしゃることもあるので、シンプルな外観形状にこだわり、油漏れがしにくい構造にするなど、デザイン性やクリーン性にも配慮しています」と営業部長の増田氏は付け加えます。

 一方、制御面では独自開発の“スターモーションコントロールシステム”を採用しています。このシステムは、主軸変速などを最適なタイミングでコントロールし、工具選択からアプローチまでの一連の動作をスムーズにすることにより非切削時間を大幅に短縮。次工程の待ち合わせ時間に余裕のあるときは、決められた位置に決められた時間までに位置決めするように送り速度をセーブし、機械動作時の振動を抑制して、加工精度維持に貢献します。

 実際に金属加工会社の中には、丸棒から角や異形状の加工品をつくるなど、難度の高い製造法を用いていることが多く、剛性の弱い旋盤ではたわみが大きく、プログラム通りに仕上がらないケースが多々見受けられます。そんな課題を抱えた会社に、同社のスイス型自動旋盤をテストカットで使っていただくと、「面粗度が断然良くなった」「刃筋が出なくなった」と喜ばれるそうです。

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(左から)三立機械株式会社 菊川支店 支店長代理 牧 淳哉氏,
三菱マテリアル株式会社 営業本部 富士営業所 所長 黒田 啓市, 営業本部 富士営業所 大原 宗晃, ドリル・超高圧開発センター 工具開発グループ 藤澤 翔一

機械性能を最大限に引き出す工具を求めて

 スター精密と三菱マテリアルの取引は、2000年代初頭に始まりました。2000年代当時、自動盤での加工は、それまでの快削鋼から徐々に変化が現れ始めます。背景には自動車部品においてインジェクターを中心としたステンレス系被削材が増加したこと、そして、医療部品においてもSUS316やチタン系の被削材が世界的に広がり始めたことにあります。ステンレスでは、切りくず処理はもちろん、冷却性では不利である油性クーラントが一般的な自動盤において、工具寿命も問題となります。さらに医療部品ではより難しいチタン系被削材が多く、当然のように穴あけ加工のネックとなっていきました。これらの問題解決として、耐熱性の高いコーティングと医療部品に多い小径サイズにてオイルホール付きのドリルが求められていったのです。当時新たなドリル開発に取り組んでいた三菱マテリアルでは、これらのニーズに応えるため、非常に耐熱性の高いVPコートを採用したMWSドリルを発売。高い性能を発揮することとなったこのドリルを機に、スター精密と三菱マテリアルの取引が始まり、その後、テストカットや出荷ツーリングでは長らく同ドリルが使用されることとなりました。2000年代当時の営業担当であった三菱マテリアル富士営業所所長の黒田啓市は、「三菱の強みである小径ロングドリルのレパートリーの広さをご説明し、深穴加工用として当社のドリルを数多くご採用いただきました」と振り返ります。その当時の三菱マテリアルの印象を大関氏に尋ねると、「航空機関連の部品加工用で採用した三菱さんの工具は耐久性が高く、回転や送りを上げても精度の高い部品をつくることができました。私が中国に駐在していたときに医療機器用でも、お世話になりました。難削材が多い航空機関連や医療機器で大丈夫でしたので、どんなものでも汎用性が高いのではないかと高く評価していました」と話してくれました。

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 2016年にはスター精密が出展する欧米の展示会で、スイス型自動旋盤SRシリーズに、三菱マテリアルで開発中だったリーディングドリルを搭載。限られた期間の実演で優れた性能を発揮し、2018年度の国内外の展示会において同リーディングドリルが搭載されることが決定しました。そして今年6月、この工具はセンタリング・面取り加工用超硬ドリル“リーディングドリルDLE”として、販売開始することとなりました。ドリルの開発を担当した三菱マテリアル 工具開発グループ藤澤翔一は、その特長を次のように語ります。「従来のリーディングドリルは、先端が鋭利な形状なので、特にステンレス系の難削材加工で欠けてしまうことがよくありました。今回開発したDLEはこの問題を解消するために、先端の強度を確保できるような試作品を数多くつくり、テストを繰り返すことで、今の二段先端角形状に辿り着きました。それに加えて、機械側にかかる負荷を下げるため、低抵抗を実現できるようなシンニングを組み合わせています」。

 それに対し増田氏は「工作機械と工具のマッチングは、加工精度向上のためにも重要です。チップを装着して送りや回転速度、切りくず処理など、さまざまな面から工具メーカーにテストしていただき、機械の性能を最も引き出す工具を開発していただきたいと考えています」と話し、「リーディングドリルDLEをきっかけに、今後さまざまな工具を積極的にご提案していきます」と、富士営業所営業担当の大原宗晃は答えました。

医療業界の発展に応える新たなチャレンジを

(左)スター精密株式会社 機械事業部 営業部 営業技術室   試運転グループ リーダー 内山 拓治氏 (右)機械事業部 営業部 営業企画室 向山 雅仁氏

 今後の展望について営業技術室室長の大関氏は次のように話します。「医療分野に関しては、今後、インドなど人口の多い地域で販売を拡大しようとしています。そのためにはコストダウンが必須です。また現在、医療機器は軸物が中心ですが、アメリカでは脊髄をつなぐプレート類の需要が増えており、スイス型自動旋盤だけではなく、固定型自動旋盤の開発も視野に入れています。私たち営業技術はクレーム対応が主な業務ですが、不具合が起きたユーザー様の問題を解決するだけでなく、どのようにすればより良い成果が生み出せるか提案できる存在でありたいと考えています」。それに対し、開発部部長の鈴木氏が付け加えます。「コストダウンの課題に対しては、約3年前から他の機械でも流用できるモジュール単位での構成を進めています。いずれにしても工作機械の原点は開発です。責任は重大ですが、一つひとつの設計図面に思いを込め、お客様に喜んでいただける工作機械を提供していきたいと考えています。特に当社の特徴である機械剛性の向上にはこだわっていきます」。

 また、高精度な部品加工を追究するために、焼き入れした鋼材をそのまま加工できる工作機械も提供していきたいとのこと。それに対応するチップを開発してほしいと工具メーカーへの要望を語っていただきました。これに対し、「当社グループの強みは、素材メーカーかつ工具メーカーであることです。焼き入れ鋼用工具の開発・製造も得意としています。素材から最適な形状で性能の高い工具をつくりあげ、しっかりとニーズにお応えしていきます」と、三菱マテリアルの工具開発グループの藤澤は力強く答えました。

 時代とともに、ものづくりに対するニーズは変化していきます。「自動車の世界では、将来的に電気自動車が普及すれば部品点数が減少していくことが考えられますが、当社が手がける精密小型部品は、最終製品の小型化・精密化が進む中で、今後も需要拡大が予測されています。私たちは、このような成長産業に身を置く幸運さを活かして、常に新しいことに挑戦し、お客様に喜んでいただける良い製品をつくっていきたいと考えています」と意気込む営業部部長の増田氏。三菱マテリアルもスター精密との協業により、医療業界の発展と世界の人々の健康づくりに貢献していきたいと誓いを新たにしました。

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