FOCUS on PERFORMANCE

世界の医療産業を支える三菱マテリアル

 世界的な需要の高まりを続ける医療機器産業。一つの部品が命を支える重要な役割を担い、常に高い精度と品質が要求される分野です。そんな医療機器メーカーの生産拠点の多くは現在、西欧や北米に集積されている。今号では、スイス・フランス・アメリカの3か国、計5社の医療機器メーカーを訪れ、加工現場の現状と世界各国での三菱マテリアルの貢献について取材を行った。

PART1: Laubscher社(スイス)

医療部品を支える精密部品加工を革新する

数百万点の精密部品を製造

 まず始めに訪れたのは、スイスのLaubscher社。Ø42mm以下のさまざまな精密部品を製造する会社です。従業員は約280名にのぼり、「世界中の顧客が求める全てのモノづくりに応える」を理念に、日々新たな挑戦を行っています。小型自動旋盤での精密部品加工は、簡単な仕事ではありません。例えば、難削材でかつØ0.3mm程度の超精密小物部品加工などがこれにあたります。同社は、年間数万点の品種を取り扱い、日産200万個を超える旋削部品を製造しています。産業別では半分以上が医療機器関連で占めており、その他は、時計や自動車産業、電気・建築向けとなっています。今回の訪問では、技術・製造部門の部長であるManfred Laubscher氏と工具購入責任者のAlain Kiener氏に、小物部品加工用工具や三菱マテリアルとの取り組みについて伺いました。


求めるものは最高品質・高性能な工具

 スイスのトイフェレンの工場では約500台の各種工作機械を使用していますが、その内400台が旋盤です。部品の大きさはØ0.3mm ~ 42mmと幅があり、部品の大きさ・形状に合わせて異なった加工方法が求められるため、機 械設備としては主軸移動型小型自動盤や主軸固定型小型自動盤、多軸自動旋盤、マシニングセンタなどを取り揃えています。「当社は各種医療分野の医療機器部品を製造していますが体内に埋め込む(インプラント)部品で はないという共通点があります」と、Manfred Laubscher氏が説明してくれました。代表的製品としては、人工股関節置換術手術器具や血管閉塞用ステントの挿入に使われる手術器具、喘息患者用吸入器の部品などがあげられます。主な被削材は、SUS303(1.4305)やSUS304(1.4301)などのオーステナイト系ステンレスです。「このような部品を常に均一の品質で製造するために当社は最高品質の工具を必要としているのです」と、工具購入責任者のAlain Kiener氏。「工具メーカーは数多くありますが、精密小物部品加工に適した工具となると、それを提供しているメーカーは極端に少なくなります。さらに、工具メーカーには当社の提案を受け止めていただき、それを高品質で実現していただくようお願いすることになります。そういった中で、三菱マテリアルには当社の心強いパートナーとなっていただいています」

Manfred Laubscher氏 Laubscher社

(左から)
Daniel Dietsch氏 Six Sigma Tools社
Alain Kiener氏 Laubscher社
Manfred Laubscher氏 Laubscher社
Marco Schneider氏 Laubscher社
Kobi Tobler 三菱マテリアル

パートナーシップが生み出す可能性

 同社では、コストパフォーマンス(寿命/価格)と品質をテーマにターニングインサートの見直しを検討開始していました。品質の再現性を担保した上で、加工コストを低減し、汎用性の高い工具が必要でした。そこで、三菱マテリアルが難削材向けISOターニングインサートのテストを提案したところ、快く受け入れてくれました。両社には、ともかく前へ進みたいという思いがあったのです。「まずは鉛フリー快削鋼を使って、ISO DCMT11サイズのインサートで医療用部品のファインボーリング加工を行いました。その成果はすぐに分かりました。次に、同じ部署にある別の機械でも使ってみましたが、それも非常に上手くいったのです。Al-RichコーティングのMP9015は寿命が2倍になっただけではなく、面粗度や外観、切削性など全てにおいて従来品に比べ、大幅に改善しました。さらには、送りの早さを倍にすることも可能にしたのです。このような大幅な改善は、今日ではめったにないことです!」とAlain Kiener氏は感嘆の声をあげ、「インサートのテストは手応えがあったので、次は他の部署で別のタイプの機械に使用したいと思っている」と次のステップへの計画にも動き出しています。汎用性が高く、使用量も多いインサートのため、彼はできれば全ての製造ラインでの標準工具にしたいと考えているのです。


さらなる期待

 もちろんLaubscher社は精密小物加工にも焦点を当てています。Alain Kiener氏は、「現在のところ、当社はØ0.3mm ~ 6mmの穴加工に三菱マテリアルの工具を使用していますが、Ø0.3mm ~ 3mmの小径サイズも導入したいと思っています。この点では三菱マテリアルとの連携が極めて重要になると考えています」
 「小径工具の改良を積極的にサポートしている」と三菱マテリアルのKobi Toblerは話します。実際に、要望や改善策を含めたフィードバックは、直接日本に送られ、このフィードバックを考慮の上、要望された工具の開発と製造が開始されます。最後に今後の期待を込め、こう語ってくれました。「精密小物部品の加工が増えていく傾向にある現在、当社にとって三菱マテリアルの重要度は増しています。長期的なパートナーシップで相乗効果を高め、有効なソリューションを見つけていきたいですね。三菱マテリアルは品揃えが非常に多く、さまざまな産業用の部品の加工に使用することができるという点も、当社にとって極めて興味深いところです」

Website: www.laubscher-praezision.ch

PART2: Mediliant社(スイス)

技術パートナーとして高品質なインプラントを生み出す

年間50万個以上のインプラントを製造

 続いて訪れたのは、スイスのル・ロックルを拠点とする製造会社Mediliant社。従業員数は50名で、年間50万個以上のインプラントを製造しています。ねじからプレートやネイル、ケージまでを取り扱い、その大部分はチタン製ですが、ステンレス合金やコバルトクロム合金も使用します。こちらでは、切削部門の技術者であるNicolas Pinguet氏、ターニング部門の技術者であるNicolas Foulaz氏、研究開発・産業部長のLaurent Ferreux氏に、製造現場の声、そして、三菱マテリアルとの関係について伺いました。


工具寿命を3倍に

 現在、三菱マテリアルは、医療部品としては比較的大きい部品の加工用に、工具をル・ロックルの工場へ提供しています。Mediliant社は、頻繁な工具の交換やそれに伴う段取り作業を減らし、機械稼働率を向上させるため寿命の長い荒削り用工具を探していました。当然ですが部品あたりの工具費を抑えることも考えていました。「私たちは、Ti-6Al-4V(グレード5)製骨プレートをブロック材から削り出す必要がありました」Mediliant社では、低剛性機械と高剛性機械を使用しているので、両タイプの機械に対応するエンドミルを選定しなければなりませんでした。これらの条件に対しての三菱マテリアルからの提案は、SMART MIRACLEエンドミルでした。「特に、Ø12 mm(R2.5mm)のラジアスエンドミルによって、以前は200分だった寿命が3倍以上の640分になりました」と、Nicolas Pinguet氏は喜びの声を聞かせてくれます。三菱マテリアルのKobi Toblerは、「SMART MIRACLEコーティングのゼロμサーフェスと極めてシャープな刃先が切りくず排出性、切削抵抗を削減し、さらに、不等リード採用の効果で防振性も高くなっています」と付け加えます。今では8台のミーリング加工機全てで類似部品加工用に三菱マテリアルのエンドミルが使用されています。


高品質なターニング加工

 三菱マテリアルは、ほとんど全てのターニング加工に対応する精密加工用工具を幅広く提供しています。一般外径加工から倣い加工、溝入れや突切り、後挽き加工にいたるまで小型自動盤に関するカスタム・ソリューションが用意されています。内径ボーリング加工では直径は2.2mmからですが、穴あけ加工では最小径が0.3mm、外径加工は、Ø0.3mm〜0.5mmの小物部品加工に対しても同様に品がそろっており、超硬ソリッド工具が標準仕様で直径0.1mmから用意されています。さらに、医療用には骨接合用トルクスねじのヘッド加工用に開発されたVQXL(小径4枚刃ロングネックエンドミル)もあります。Mediliant社では、MT9000シリーズのノンコートターニングインサートとSMART MIRACLEシリーズのエンドミルを採用しています。ターニング加工に関しては、主にワーク径5mm〜16mm、チタン合金をメインに加工していますが三菱マテリアルへの期待は大きく、開発品の評価も頂いています。Nicolas Foulaz氏は話します。「小型自動盤でのチタン合金製ねじの外径旋削では、低送り、微小切込みで切りくずの機械・ワークへの絡みが発生し、インサートが欠損することで安定した品質が得られません。また、切削速度の変化も大きく面の粗さにバラツキが生じます。この課題を解決してくれたのが三菱マテリアルの難削材用MP9000、MT9000シリーズ2材種のISOインサートです」Nicolas Foulaz氏はこのインサートを高く評価していました。「インサートの寿命は申し分なく、仕上げ面も従来の工具と比べて非常に良好でした」三菱マテリアルは、お客様の評価をもとに改良を加え新しいソリューションを提供しています。



Nicolas Foulaz氏 Mediliant社

(左から3番目)Arnaud Boujon氏 Mediliant社
(右から3番目)Nicolas Pinguet氏 Mediliant社
(右から1番目)Laurent Ferreux氏 Mediliant社

共に問題解決を目指す

 Mediliant社にとって、三菱マテリアルはモノづくりの課題、改善を共に対処していく長期的な技術的パートナーとなっています。次のステップとして、加工能率改善への取り組みを切りくず排出性に優れたSMART MIRACLEエンドミルで形状荒加工に採用することを計画しています。「我々がメーカーとして重視する点は、納品先に対して原材料、高精度な加工、殺菌などのプロセスチェーン全体として包括的な品質管理を一手に引き受けているということです。我が社は、積極的な成長を遂げるために、三菱マテリアルを有能なサプライヤーとして、パートナーに選びました」と、Laurent Ferreux氏は強調してくれました。



Website:www.mediliant.com

PART3: Greatbatch Medical社(フランス)

最適な切削工具を手に入れ、生産効率の向上に繋げる

プロテーゼのスペシャリスト

 スイスを後にし、フランスへ向かいました。3番目に訪れたのは、技術開発および医療工学研究の中心であるGreatbatch Medical社のショーモン工場です。同社は、世界的な高齢化により成長を続ける整形外科用インプラントと補綴機器の世界的なスペシャリストとして知られています。ヨーロッパとアメリカで10,000人もの従業員が働いています。フランスのシャンパーニュ地方の入り口にあるショーモン工場は、腰、肩、脊椎インプラント生産を行うインテジャーグループの重要な拠点です。また、同社の経営戦略の拠点でもあります。現在、将来の収益確保と事業拡大計画達成に向けて、多数の従業員の採用、設備投資、社屋拡張などを積極的に行っています。こちらでは、整形外科テクニカル・エキスパートのRichard Millot氏、テクニカル・エキスパートのBenjamin Martin氏に、新しい材料に対しての取り組みや現場での生産性向上について伺いました。

新材料の切削に挑む

 切削工具の責任者であるRichard Millot氏、Benjamin Martin氏は、「両社は特別なパートナーであり、三菱マテリアル フランスの技術コーディネーターBento Valenté と密なコミュニケーションを取ることが同社に不可欠なことだ」と断言してくれました。取引当初から両社は多くのやりとりをしてきましたが、コバルトクロム合金やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)のような新素材加工への取り組み結果は、両社のパートナーシップをより強固にしてくれました。Richard Millot氏は「これらの材料は、私たちの工場ではまだ新しいものであり、用途が拡大しており加工改善の軸をなすものです。私たちは三菱マテリアルの積極的な技術サポート、改善提案、高機能工具開発を必要としています。例えば、素材厚さ0.1mmの極薄厚部品加工や難削材加工での加工改善を大きく左右する重要な要素の1つが工具選択です」と両社の具体的成果について、現場で見学することを申し出てくれました。


(左)Richard Millot氏 Greatbatch Medical社
(右)Bento Valenté  三菱マテリアル フランス

(前列左)
Eric Crosland 三菱マテリアル フランス
(後列左)
Stéphane Ligneul 三菱マテリアル フランス
(後列中)
Benjamin Martin氏 Greatbatch Medical社

生産性向上に貢献する

 PEEKの機械加工の現場では温度が21℃に保たれ、高精度ラジアスエンドミルのVCPSRBシリーズがØ0.6mmから使われています。特に頸部インプラントとして用いられるディスクの加工で切りくずつまりが発生して 加工面を悪化させる課題を解決し、高精度な加工を達成しました。「これはGreatbatch Medical社の生産性向上に三菱マテリアル社が注意深く耳を傾けてくれたことにより実現することができた大きな成果です」と話してくれました。また、耐溶着性を改善したSMART MIRACLE(VQ)やIMPACT MIRACLE(VF)タイプのソリッドエンドミルも用途により選択し採用しています。これらのソリッドエンドミルは、難削材でポイントとなる切りくずの排出、振動抑制(不等リード)を考慮した形状に最適化され、さらに耐摩耗性に優れたコーティング技術でコバルトクロム合金(HRC40 ~ 45)の薄板プレート加工で非常に良好な結果をもたらしました。「特に、Bento Valentéからのアドバイスで振動抑制効果の大きい不等リードを採用することでマシニングセンタでのチタン合金加工おいて切削速度1,000mm/min以上の高能率加工を実現することができました。それは以前の工具では実現し得なかったことです。検証後、本格採用の条件である工具寿命(コスト)と安定性や加工変質層にも問題なく、全ての必要条件をクリアーしたと断言できます」とBenjamin Martin氏が話してくれました。さらに、深穴加工用にはØ1.3mmのクーラント穴付小径ロングドリルのMWSタイプを採用した結果、深さ30Dの深穴加工のサイクルタイムを1/4に短縮することができました。

今後の発展に向け

 進展中のプロジェクトに加えて、Greatbatch Medical社では生産能力強化に向けた加工能率向上の追求と患者のニーズに合わせた新製品開発が課題となっています。「この課題を達成するため生産技術エキスパートチームは、スペイン(バレンシア)にある三菱マテリアルのテクニカルセンターを活用したいと思います」これらの展望は、工具性能を100%引き出すことで生産現場での課題解決を目指して、三菱マテリアル社とGreatbatch Medical社との密接なパートナーシップをさらに高めています。

PART4: Nexxt Spine社(アメリカ)

高精度な工具で、クオリティ・オブ・ライフが蘇る

foc_vol03_08.png

(写真左)Robert D. Thomas II氏 Nexxt Spine社 (写真右・右)Dan McCloskey 三菱マテリアルUSA

脊髄損傷に苦しむ患者を救う

 舞台をアメリカに移し、訪れたのはインディアナ州にあるNexxt Spine社。同社は骨接合用ねじ、プレート、椎体間関連製品などの医療器具を取り扱い、脊髄損傷に苦しむ患者の機能回復のために尽力する企業です。2009年に創立され、インディアナ州のノーブルズヴィルに最新生産設備を構え、業界をけん引してきました。脊髄インプラント関連製品の100%、手術器具の95%を製造する一貫体制を確立し、手術効率を高めるイノベーションを起こす製品開発に注力しています。今回の訪問では、製造管理者のRobert Thomas氏と加工技術者のBeau Riser氏に、現在の脊髄関連の取り組みや画期的な技術について話を伺いました。

圧倒的なプロセスの短縮

 同社は、骨固定用ねじ、プレート及び椎体間関節を主として取り扱い、「私たちは全てのインプラントを支える医療部品を製造しています」とRobert Thomas氏が話すと、「素材としては、現在、アルミニウムやPEEKが主流ですが、実はNano Matrixという新しい素材を用いた椎体間も完成間近を迎えています。まだ製品開発段階ですが、先に行われた業界の見本市NAS(北米脊椎学会議)で大きな話題を集め、かなり画期的な製品だと自負しています」とBeau Riser氏が付け加えます。Nexxt Spine社は、インプラントの製品設計開発から生産技術確立まで一貫した商品開発をしており、それらのプロセスにおいてユニークなアプローチを採用し、業界随一の効率化を実現しています。Beau Riser氏は開発プロセスについて次のように語ります。「私たちは常に商品開発プロセスの改善を行っています。おそらく、業界水準の3分の1または2分の1の時間短縮を達成しているでしょう。個々の要求が異なる医師たちに対応するため、開発期間を短くすることが鍵となります。高い技術力とこれまでの製品開発でのノウハウを活かし、既存製品を改良しながら医師の要求に合わせ込んでいくことが重要なのです」

高品質と安定感が必須条件

 三菱マテリアルのNexxt Spine社に対する貢献についてRobert Thomas氏は話します。 「三菱マテリアルは、技術革新と精度に重点を置いた世界トップクラスの高品質製品を開発しているメーカーではないでしょうか。Nexxt Spineが顧客の高度なニーズに応え続けるためには、高度な品質と抜群の安定感が必須条件です。三菱マテリアル製品はこの点でまさに比類のない性能を持ち、競合他社にはない最高の技術力があると感じています。例えば、私が以前NiTi合金(形状記憶合金)という新素材の加工に小径コーティングエンドミルを試した時のことです。他社の製品では苦戦しましたが、三菱のØ0.014(" 0.35mm)エンドミルを使用したところうまくいったのです!」

共に技術革新を起こす

 三菱マテリアルは同社にとってどんなブレイクスルーをもたらしているのか尋ねてみました。「先ほどの、新しい材料にお話を戻しましょう。私たちはツールをアウトソーシングしてコバルトクロム合金の加工に使う準備をしています。NiTi合金は、5年ほど前に出た新しい材料ですが、コバルトクロム合金以前から使用されていたにもかかわらず安定した加工ができないことから製造現場では厄介な素材でした。そんなとき三菱マテリアルのDan McCloskey氏は、この難削材の深穴あけ加工にL/D=20に対応可能なØ1.5mmのドリルを推奨してくれました。またPropyluxというナノファイバー材の小径穴あけ加工をする際、穴曲がりで穴が貫通してしまい不良品が出た時も、Dan が代わりに新しいツールを提案してくれました」Robert Thomas氏は今後の両社の関係について次のように話す。「Danは良い人ですよ。とりわけ頻繁に足を運んでくれ、とても親切なのです。ですから、将来は大きく開けていると思います。三菱マテリアルとNexxt Spineとの未来はとても明るいと思います。両社は大変先進的で成長中の企業です。今後協力してゆくのが楽しみです」「皆さんに、三菱マテリアル製品を使うようお勧めしたいです」とBeau Riser氏が付け加えます。「三菱の方が、少しだけ値が張りますが、間違いなくそれだけの価値があるのですから」
foc_vol03_09.png

(写真左・中央)Beau Riser氏 Nexxt Spine社 (写真右・右)大宮司 久 三菱マテリアルUSA

PART5: Willemin-Macodel社(アメリカ)

加工精度が生命維持技術を革新する

Jim Davis氏 Willemin-Macodel社

さまざまな医療部品を製造

 最後に訪れたのは、スイスを拠点とする工作機械メーカーWillemin-Macodel社。その名は「ドレモンの機械」を意味し、歴史ある機械製造の町ドレモンに由来しています。最先端の加工技術イノベーションで知られる同社の製品は非常に高精度であり、微細加工に適しています。今回は、アメリカにも拡張した同社のインディアナ州ノーブルズヴィルに勤務するアプリケーションマネージャJim Davis氏に話を伺いました。「我が社は工作機械メーカーとして、あらゆる種類の医療部品に最適なマシンを医療業界全体に供給しています。例えば、歯科用や脊髄用、顎顔面用、人工関節用(腰、膝、肘、つま先)などの幅広い分野に対応しています。また、顧客に代わり応用技術やプロセス開発及びテスト加工も行っており、工作機械とともに納品すべきプロセスを設定するためのトータルソリューションを提供しています。最近は歯科用ソリューションを確立しました。切削で人工歯根を加工するのですが、これには三菱マテリアルのSMART MIRACLEエンドミルØ0.5mm が使われることになると思います。この最新モデルのマシンは、すでに国内全域で高い評価を受けています」同社は米国全土の顧客をサポートするために新しい技術の提供や技能向上の研修を行っています。同氏は「顧客が加工方法をわからないときや、より速くより安く作りたい部品がある場合に、我々が最適な加工プロセスを提供しています」と胸を張ります。

高品質・高精度は保険

 スイスで20年近く旋盤加工業に携わってきたエキスパートであるJim Davis氏。彼の目から見た三菱マテリアルの工具はどう映って いるのでしょうか。「一言で言えば、機械能力をフルに発揮させてくれるものですね。三菱マテリアルの工具材質は、耐熱性、耐摩耗性に優れ、また耐欠損性もあるので高速・高送り加工ができます。このメリットは無限大です。工具の切れ味、寿命も優れており、さらには研削精度も高く、高精度な仕上げ面も得られます。他社のエンドミルでは、良好な仕上り面を得るには仕上げ加工が2度必要ですが、三菱マテリアルの製品ならばそれが不要なのです。まさに地球上で最高の工具ですよ」と同氏はさらに付け加えます。 「スイス式の小型CNC自動盤を使った旋盤加工では、穴をあけた後の仕上げ加工やねじ加工にボーリングバーとスレッドミルを使うことがよくあります。しかし、安価なドリルを使い、もし前加工のドリルが折損してしまえば、それがボーリングバーの破損を引き起こし、さらにスレッドミルも破損とドミノ倒しのようにすべてにトラブルが発生してしまうのです。この現象を“アンセットアップ”と呼び、つまりドリルの品質が何よりも大切ということなのです。そういった意味で、三菱マテリアルが提供する高品質なドリルを使うということは、ちょっとした保険なんです。高品質、長寿命と分かっていれば安心ですからね」
foc_vol03_11.png

製造現場が求める工具

 医療部品において部品の精度を高めることは、常に患者にとって大きなメリットをもたらします。インプラントの精度が良ければ手術時の装着が用意で、繰り返しの微調整が減少し、手術時間、患者への負担が改善されます。つまり、より安定した部品をより早くつくることが、さらなる成功を導くのです。Jim Davis氏は医療業界における当社の貢献について次のように話してくれました。「医療業界は、自動車や宇宙航空業界とはモノづくりのポイントが異なります。宇宙航空産業用部品はワークは単一で、同じ部品に数百のツールを使うにしても、ツール自体は同じものを使います。部品も非常に大きい。また、自動車用部品は非常に高い生産効率が必要であり、勤務シフトごとにツールの変更を強いられることが多々あります。一方で、医療業界では少量多品種の製品を同じ設備で加工する必要があります。これを30個、これを20個、あれやそれを15個・・・・と加工と段取り替えの繰り返しで多くのセットアップ時間が必要になってしまいます。医療では、効率性よりも性能が重要とされることがしばしばあります。セットアップ前に信頼性の高い工具がわかっていれば、最適条件、加工精度等を探す必要はありません。セットアップさえすれば作業に入れるためトータル時間の節約、そしてよりよい結果につながるのです。また、部品を30個作る際に、1個あたりのサイクルタイムを1分節約することは、工程全体で30分の節約に過ぎませんが、セットアップに使用していた1日を丸ごと省くことができれば、大きな時間の節約になります。これは本当に大きな違いです。アメリカの生産現場での加工費は、1時間当たり平均で300米ドル、歯科用の場合、1時間で750米ドル程度です。まさに“時は金なり”ですね!競合他社のツールのほとんどは、100部品ごとに交換する必要がありますが、三菱マテリアルのものならば、交換は500部品ごとで済みます。ツール交換だけでも膨大な時間短縮になるのです。三菱マテリアルの製品とミクロン単位の精度が要求される精密部品との相性は抜群です。イメージしやすいよう例えれば、紙1枚の厚さが約100ミクロンですが、部品の中には10ミクロンの加工精度にコントロールする必要があるものもあります。それ程に厳しい精度が要求されるのです。また、小物精密装置では多くの穴や形状加工があり、重要なポイント全てで全数測定を行います。このような高精度な加工では、ツールの切削性能とシャンク精度といったトータルの品質が大きな違いを生みます。高精度な三菱マテリアルの製品は効果的で、作業の質の向上に貢献しています」
foc_vol03_13.png

今後の医療機器

 「今後、機械加工による仕上げ加工が急増するでしょう。また、人工股関節の構成部品となるHip-BallやHip-Cupなどを3Dプリンターで製作することも増加するはずです。最近では、金属材料を使用し3Dプリンターで製作した非常に高価なHip-Cupもあります。3Dプリンターの欠点を挙げるなら、まだ仕上げレベルの精度が得られないことです。今後、3Dプリンターを活用しつつ、将来的には滑らかで光沢がある精度の高い高品位部品加工が頻用されるようになるでしょう。そして、いろんな医療部品がより小さく、より精密なものになっていくはずです」
トップページへ