EYE on MARKET

医療機器産業を支える切削加工

さらなる市場拡大が期待される医療機器産業

 経済成長著しい新興国での人口増加と先進国での高齢化は、医療機器産業にとって安定したグローバルな需要拡大が見込める分野として期待されています。現在、医療機器市場の80%近くを占めるのは、個人所得が高く、保険制度、医療機関の整備された米国、西欧、日本の先進国です。これまで医療機器は、開発費を含め莫大な費用、時間、そしてリスク管理が必要であるため、欧米の大手メーカーのシェアが非常に高く、付加価値の高い分野とされてきました。しかし、その一方で先進国での医療費抑制、新興国での価格ニーズに対応するため、大手メーカーによるグローバルな企業買収によるコスト低減を図る動きが活発になっています。特に、需要拡大が最も大きい中国を含めたアジア地域の振興国では、欧米メーカー、医療研究機関と連携した新規参入企業も台頭してきており、自動車産業同様に生産拠点のグローバル化は加速するでしょう。今後は、医療機器が医薬品と異なり単体製品販売ではなく、現地での医療認証取得以外に医療従事者のスキルアップなどへ対応可能な体制づくりが課題となります。

新興国の発展と先進国の高齢化が市場拡大の鍵

 近年、新興国では人口だけではなく個人所得も増加しています。家電製品、自動車の需要が急増しており、今後はさらなる生活レベル向上のニーズが高まることが予測されます。また、2030年には主要国での世界高齢化率が20%以上に達することから、医療機器の需要は安定して拡大するでしょう。さらには、近年の総合医療技術の発展と高齢化の進行により老後のライフスタイルが変化し、リスクの低減はもとより、再生医療分野(代替機器、生体再生)では、運動機能回復を視野に入れた顧客ニーズが高まり、技術革新が進むと思われます。

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計測系

生体現象計測機器(CT、MRIなど)、検体検査分析機器、診断システムなど

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治療系

人工関節等生体機能補助機器、処置用機器、手術用機器など

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医療機器用素材と切削加工

 医療機器分野の切削工具需要の80%は、金属材料の機械加工がメインであるインプラント(人工関節、デンタル)、外傷用機器(Trauma)、手術用機器が占めており、チタン合金、ステンレス合金、コバルトクロム合金の難削材を使用。また、これらの機器は一般機械部品とは異なり、同一材種でもアレルギー、血液適合性、耐食性への要求特性が高く、認証素材の使用が義務付けられています。医療機器では、耐食性、軽量化の観点から非常に航空機部品に近い素材が使用されていますが、インプラント(埋め込み)の機能改善(使用期間、小型化)を図るため、チタン合金から機械強度の高いコバルトクロム合金を使用した部品が増加しています。しかし、コバルトクロム合金は、チタン合金に比べ被削性が非常に悪く、工具寿命が1/3 程度に低下することから加工改善要望の高い材料です。また、医療分野でもCFRP やセラミックス系素材も増加し、新素材開発も行われていることからさらに、難削材が増加すると予測されます。

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再生治療部品の機械加工部品と主な被削材

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医療機器用素材の製造現場で使用されている当社の工具アプリケーション

 医療部品は難削材で異形形状が多く、高能率加工が難しい加工の一つで、工具単体での改善は困難です。加工能率、工具寿命改善にはCAD/CAM-工作機械-切削工具のトータルアプリケーションの活用が不可欠です。

コバルトクロム合金

 医療用素材で最も難削材であるコバルトクロム合金は、チタン合金と比較し、耐摩耗性に優れ使用期間が延長可能で人工関節の摺動部やSpine/Screw などの小さい部品や薄肉部品で使用します。しかし、機械強度が高く、溶着も発生しやすいため、耐摩耗性の高い工具材種を選定することがポイントです。

チタン合金

 医療部品では、チタン合金(Ti-6Al-4V)が生体適合性に優れることから最も多く採用されている素材です。チタンは、熱伝導率が低く切削熱が高いので耐熱性に優れた工具材種と切りくず排出性を考慮した工具形状選定が必要です。

ステンレス合金

 小物部品が多いことからドリル、エンドミルはソリッド工具を使用します。オーステナイト系ステンレス(SUS316L/SUS317L)と析出硬化系ステンレス(SUS630)で切削特性は大きく異なり、切りくず排出が難しいオーステナイト系ステンレスの深穴加工は非常に加工が困難な材料です。

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