EDITORIAL

特殊工具の設計は思いやりの心で

 MMCマガジン「YOUR GLOBAL CRAFTSMAN STUDIO」の第6号をご覧いただき、誠にありがとうございます。

 今号は自動車産業特集となっていますが、当社の加工事業カンパニーの成長は、自動車産業の発展に支えられてきたといっても過言ではありません。まさに、当業界のお客様に多くのことを教えていただき、お客様に助けられてきたからこそ、今日の我々があると考えております。

 自動車のエンジンを例に挙げますと「5C」といわれる主要パーツがありますが、これらを削るための工具は大半が特殊な形状をしています。これら特殊工具の設計は難易度が高く、その理由はお客様の加工ニーズを実現するための専門的知識やノウハウが必要であることに加えて、さまざまな視点を持って設計しなければならないためです。一例としては、ある工程で使用したインサートを再研磨し、意図的に小さくしたものを別の工程で再利用することがあります。このような特殊な使い方を前提とした設計をするには、二つの異なった部品を加工するそれぞれの工程とインサートの使用数量を正確に把握していなければなりません。

 また、工具性能以外の面、例えばお客様がメーカーから納品された工具の受け入れ検査をする際に測定しやすい形状にしておくこと、工具を廃棄するときにリサイクル分別がしやすい構造にしておくこと、さらにはお客様の生産技術部門や調達部門の方にも理解しやすい図面表記となっていることなども大切で、お客様の各部門の方への思いやりの心が特殊工具には必要です。

 本情報誌のタイトルでもある「YOUR GLOBAL CRAFTSMAN STUDIO」は、加工事業カンパニーのブランドメッセージですが、ここには「我々は工具という商品のものづくりの追求だけではなく、お客様のさまざまなご要望に対応し、可能な限りお応えしていきたい」という想いが込められています。まさに、自動車産業で多く使用される特殊工具は、当社のこのような想いを体現するのにふさわしい商品であると思います。

 近年では、自動車産業においても、特殊品ではなく標準品の採用も増えてきておりますが、電話帳のような分厚いカタログには3万点以上の商品が掲載されており、この中からお客様がご自身で最適な工具と切削条件を選択されるのはかなり大変な作業です。お客様は一人ひとり達成したいゴールが異なりますので、「加工コストをとにかく安くしたい」、「工具費よりも生産性が重要」、「仕上げ面が重要」、「安全な切りくず処理をしたい」、さらには「切削の振動、騒音、バリを抑えたい」など、多くのご要望があります。このようなお客様のさまざまなニーズに対し、総合的に解決策を提供することができる「ソリューション力」が今後一層重要になってきます。お客様の若手技術者の育成をお手伝いする研修の開催、お客様の現場に近い環境下での加工テスト、出張ライン診断などの技術サービス、CAE解析を駆使して開発した新工具のご提案など、ソリューションサービスの形態は多岐にわたります。

 当社の開発本部は、個別の製品の性能向上は当然ながら最重要テーマとしてこれからも継続して取り組んで参りますが、「三菱マテリアルはいつも気軽に相談に乗ってくれ、充実したソリューションサービスがあるから工具を発注する」とお客様から言っていただける存在になることも目指しています。

 2017年6月には、岐阜製作所の敷地内に中部テクニカルセンターを開所致しました。産業別に最適なソリューションを提供するための施設となっておりますので、自動車産業のお客様にも、ぜひお越しいただきたいと考えております。今後も変革に挑戦し続ける三菱マテリアルにご期待ください。

三菱マテリアル株式会社
加工事業カンパニー
開発本部長

池永 幸一

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