CUTTING EDGE

超耐熱合金を熱により軟化させる

超耐熱合金の切削加工で特に優れた性能を発揮

従来の超硬エンドミルでは想像もつかない速度で切削するエンドミル、それこそが現在開発中のセラミックエンドミルです。

耐熱性に優れたセラミックスを母材とし、INCONEL®などに代表される超耐熱合金の切削加工で特に優れた性能を発揮します。超硬エンドミルで超耐熱合金の加工を行う際、工具寿命を伸ばすために切削熱を抑える必要があり、切削速度を70m/min程度に設定するのが一般的です。しかし、セラミックエンドミルでは被削材を切削熱で軟化させて加工するため、切削速度を500m/min以上に設定。「超耐熱合金を熱により軟化させる」と言うと矛盾しているように聞こえますが、超耐熱合金であっても1,000℃付近の温度域になると耐力、引張り強さが低下するため、切削での加工が容易になるのです。超硬エンドミルではこのような温度域での加工は到底不可能ですが、セラミックエンドミルなら可能です。切削熱を極限まで上げ、赤熱した切りくずを出しながら加工する姿は、ぜひ一度目にしてほしい圧巻の一言です(写真1を参照)。

写真1 セラミックエンドミルによる加工 INCONEL®はHuntington Alloys Canada, Ltd.の登録商標です。

能率や工具寿命でも高いパフォーマンスを発揮

セラミックエンドミルの加工形態は「切削」より「溶削」という言葉が一番しっくりくるかもしれません。超硬エンドミルでは想像もつかない加工形態で超耐熱合金を加工しますが、加工後のその刃先には目立った損傷はほとんどなく、わずかに溶着が見られる程度。先述のように耐熱性に優れるセラミックスを母材に採用しているため、高い切削熱が発生する加工形態においても熱損傷が見られないのが特徴です。超硬エンドミルと比較して寿命評価を行うと、その差は歴然。超硬エンドミルでは切削初期に折損してしまいますが、セラミックエンドミルでは約35mまで切削可能になります(図1を参照)。そもそも超硬エンドミルではこのような高切込み、高送りの条件を選択することは不可能ですが、セラミックエンドミルでは可能となり、能率という観点からも非常に優れていることが分かります(図2を参照)。これまでセラミックエンドミルの利点ばかりを列挙しましたが、一つの問題点として加工設備への制限があります。加工時に高い切削熱を得るには切削速度を上げることが求められ、そのためには高回転仕様の主軸を持つ工作機械が必要となります。十分な切削熱が得られない状態では、被削材が軟化しない状態での加工となるため、異常摩耗や欠損などが発生し、本来の性能が発揮できません。超耐熱合金の加工において優れた性能を発揮するセラミックエンドミル。そのパフォーマンスを最大限引き出すには、工作機械側にも高いパフォーマンスが求められるのです。

開発本部 ソリッド工具開発センター 渡邊 博史

mag_01_cutting_04_ja.jpg mag_01_cutting_05_ja.jpg

mag_01_cutting_06_ja.jpg

さらなる活用に向けて

自身で開発したにもかかわらず、開発初期は使用方法である加工条件がつかみきれず、折損や異常摩耗の繰り返しで、まるで評価ができない日々が続きました。その後、社内で試験を継続した結果、やっと一筋の光が見えてきました。今後も、大きな可能性を秘めるセラミックエンドミルの性能をさらに引き出せるよう、研究開発に取り組んでいきます。

トップページへ