CUTTING EDGE

1kmでわずか0.48mmの変化という驚異の真直度

液体コーティングのプロセスで活躍するスロットダイ

 スロットダイは、液体を対象物にコーティングする際に使用する工具であり、液晶パネルや高機能フィルム、リチウムイオン二次電池などの精密なコーティングが必要な製品に使われています。スロットダイは、左右対になった「ステンレス製の本体」と「塗布口となる超硬の刃先」を組み合わせた構造となっており、塗布液は本体のマニホールドという液溜まりから超硬の刃先へ押し出され、対象物に均一にコーティングされていきます。スロットダイによる塗布は、スプレーなどの一般的な塗布方法に比べ、塗布液が空間に蒸発、または飛散することがないため、クリーンで効率的と言われています。

 超硬工具メーカーとしてのノウハウを応用し、超硬刃先付スロットダイを初めて開発したのは、1981年の三菱金属株式会社東京製作所(現在の三菱マテリアル株式会社筑波製作所の前身)であり、当時はオーディオテープや磁気テープの製造に使用するため、フィルムメーカー向けとしてダイコータ方式のスロットダイを製造。その後MMCリョウテック株式会社に移管され、2000年には液晶テレビやパソコンのFPD(フラットパネルディスプレイ)業界に進出しました。さらに第10世代と呼ばれる2,880mm×3,130mmの大型液晶パネルをはじめ、リチウムイオン電池の電極コーティングなど、時代の変化に合わせた進化を続け、スロットダイのリーディングカンパニーであり続けています。

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(左から) MMCリョウテック株式会社 耐摩工具事業部 精密技術グループ 係長補佐 林 敦
     MMCリョウテック株式会社 耐摩工具事業部 製造部スロットダイ係 係長 長屋渉
     MMCリョウテック株式会社 耐摩工具事業部 精密技術グループ サブリーダー 磯田孝洋
     MMCリョウテック株式会社 耐摩工具事業部 精密技術グループ グループリーダー 金山利彦

真直度、面粗度など、極限の精度を追求

MMCリョウテックのスロットダイは、30年以上にわたり培ってきた高度な研削技術とノウハウを駆使し、真直度、面粗度、溝幅偏差を極限まで抑えてつくられています。反りのない真っすぐな刃先であることを示す「真直度」は、約1mあたり1 ~ 2μmの精度となっています。直近では、大型液晶パネル向けの2.5mの長尺スロットダイにおいて要求された真直度はなんと1m程度の従来品と同じレベル。この長さで従来品と同程度の真直度を出すことは困難を極めました。熱処理や機械加工の工程を根本から見直し、粗から中仕上げ工程で発生する残留応力や曲がりなどを可能な限り減らした上で、仕上げ工程の研削加工においても、ワークの取り付け方法や研削条件などを徹底的に追求した結果、見事に2.5mという長さで1.2μmの真直度を達成しました。これは1kmに換算すると0.48mmと、わずかにシャープペンの芯1本分の範囲の変化しかないという驚異的な値です。

 さらに、塗布性能に大きく影響を及ぼす「面粗度」についても、刃先である超硬部分はRzで約0.1μm、本体であるステンレス部分においても約Rz0.2μmという値であり、その表面はピカピカな鏡面になっています。また、塗布液を排出する刃先の溝幅偏差についても、1mあたり約1 ~ 2μmに抑えられています。

 「私と林、そして長屋の3名は、スロットダイの開発当初から30年近く設計・製造に携わり、そのノウハウを蓄積してきました」と話す金山。「スロットダイは、面上の寸法が全て同じであっても、一台一台、“顔つき”が違います。図面通りに仕上げ加工をしようとしても、素材のロット違いや熱処理の加減などによって、仕上げ工程の研削条件をかなり変えなければならないこともあります」と話す技術部の林。製造部の長屋は「その“顔つき”の違いを把握して、図面の指示通りの精度を出せたときは大きな達成感があります」とスロットダイづくりの醍醐味を話します。さきほどの3名と比べると若い磯田は、1台で3つの塗布液を同時にコーティングできる3層塗工スロットダイを開発するなど、多様化する顧客のニーズに応えて、日々新しい製品を開発しています。

 現在、MMCリョウテックのスロットダイは、リチウムイオン二次電池と液晶パネルの市場において、グローバルでトップクラスのシェアを獲得。中国では現在トップシェアを誇っていますが、来年には刃先の再研削サービスを現地で開始し、今後成長が見込まれる中国市場での地位を確固たるものにしていく考えです。さらに、まだスロットダイを使用していない塗布業界の新規開拓についても、積極的に取り組んでいきます。

※真直度について/真直度の考え方は、任意の位置で測定した一方向の真直度(その方向に垂直な幾何学的に正しい平行な二平面で、その直線形体を挟んだとき、平行二平面の間隔が最小となる場合の二平面の間隔で表す。JIS B0621)としています。


スロットダイ製造場所の歴史

1981年 三菱金属株式会社東京製作所で製造開始
1989年 三菱金属株式会社岐阜製作所に製造移管
2000年 株式会社リョウテックに製造移管
2011年 MMCリョウテック株式会社に社名変更

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