CRAFTSMAN STORY

「DF2XLBF」

グラファイト加工用 ダイヤモンドコーティングエンドミル (仕上げ用)DFエンドミルシリーズ「DF2XLBF」

シャープエッジ素材にCVDコーティング、絶妙なバランスで両立

2016年に発売されたDF2XLBFは、とあるお客様向けの特殊品として開発された。目標は複合硬質レジン材の加工における工具寿命を従来品の約2倍まで延長させること。早速試作品が完成、社内での少量テストの結果は上々なものの、いざお客様の現場で中量テストをするとなぜか結果が全く出ない。

しかし、最後まで諦めずに取り組み続けた結果、当初の予想を超える長寿命化へとたどり着く。成功の背景にあったのは、若手メンバーたちのひたむきな努力だった。

突きつけられた最悪の評価

―まずDF2XLBF開発の経緯を教えてください

冨永  当社には以前からDFシリーズというグラファイト加工用のCVDダイヤモンドコーティングエンドミルがありました。今回開発したDF2XLBFは、製品名の最後に付いている「F(Finish)」が示している通り「仕上げ用」です。元々は、医療関連のとあるお客様向けに特殊品として開発を行い、後に汎用品として展開したものです。

細川  お客様から最初にお話をいただいたのは2014年の11月でした。目的は複合硬質レジン材の加工における工具寿命の改善でした。目標値は既存品の約2倍。工具の世界で寿命2倍というのはかなり厳しいものでしたが、早速試作品に取り掛かりました。社内で数回の試作とテストを繰り返し、翌年の夏にはお客様の現場でのテストも順調にクリアしたという連絡を受けました。その後、無事発注をいただいたところまでは良かったのですが、実際にはそこからが「本当の開発」の始まりでした。

―納品後にトラブルがあったわけですね

冨永  お客様の各製造拠点での使用が一斉にスタートすると、工具寿命が著しく低下する不具合が相次いで発生しました。もちろんその度に毎回対策品を製作し、社内テストで基本的な性能に問題はないことを確認した上でご提出していましたが、なぜかお客様の現場では毎回寿命がばらつき、低下するという問題が発生しました。

細川  あるとき、お客様から「もう(開発を)やめましょうか?」とかなり厳しい姿勢を見せられました。しかし、根本的に何か大きな問題があるのではないかと思い、無理をお願いしてお客様の加工現場を訪問する機会をいただいたのですが、その場で「何度もテストして手間がかかるし、結果は良くないし、もう三菱の工具は使いたくない」とはっきり言われました。それでも何とか食い下がり、加工の様子を見せていただいたとき、重要なポイントに気づきました。お客様の現場では、一つひとつの部品の形状が少しずつ異なっていたのです。つまり、部品ごとに切削負荷のかかり方が変わっていたのです。その後は、部品ごとに形状の違いがあることを考慮しながら、刃先形状を大至急で改良しました。この改良には自信がありましたので、何とかもう一度だけテストできないかと、営業さん経由でお客様にお願いしました。

―自信の裏付けは何だったのでしょう

冨永  一言で言うとコーティングと刃先形状の最適化ですので、あまり面白みがない答えになってしまいますが(笑)。複合硬質レジン材は、とにかく工具摩耗が猛烈に激しい材料ですが、炭素と反応しやすい鉄系金属ではありません。そのため、耐摩耗性に極めて優れるCVDダイヤモンドコーティングを採用しています。一般的にCVDはコーティング膜が厚くなりますので、シャープな刃先をつくるのが難しい。しかし、今回は仕上げ加工ですから、刃先はシャープな方が良い。つまり切れ味は膜が薄い方が良く、耐摩耗性は膜が厚い方が良いわけです。

細川  今回は首径と刃長も工夫しました。工具剛性を上げ、寿命を延長させる一般的な手法として、首径を太くし刃長を短くすることがあります。しかし、今回は加工する部品の形状に少し特徴があり、深い部分まで小径のエンドミルの先端を入れる必要がありました。よって、首径も細めに刃長も長めにしなければならず、切削時に干渉が起こらない範囲で、しかし工具剛性も落とさない最適な首径を検討しました。その結果、当初1.90mmであった首径を1.86mmと、0.04mm細くしたのですが、このわずかな違いを見つけたときに「イケる」という感覚がありましたね。

cra_vol07_02.png

命運を賭けた、最終テストへ

―そのときのお客様の反応はどうでしたか?

細川  お客様側のご担当者が人情味にあふれる方で「そこまで三菱さんがおっしゃるなら、もう一度だけ」と、あと1回だけテストを許可してくださいました。しかし、条件が付いており「加工環境(被削材、加工条件と加工機)を全てお客様と同じにして、期日内に指定数量まできちんと削り、そこで良好な結果であればお客様の現場でもう一度テストしていただける」というものでした。入手困難であった被削材も何とか入手し、加工機はお客様と同じものを新たに購入。「当社にとって最後になるかもしれない」という崖っぷちのテスト加工を開始したのですが、ここで活躍してくれたのが生田さんでした。

生田  当時は入社してまだ1年も経っていない頃でしたので、このような重要な仕事を任されることになり不安がよぎりました。しかも材料は複合硬質レジン材という聞いたこともないもの。テストは1セット5個を加工するごとに、刃先と部品の写真を撮影してチェックします。部品を1個加工するのに30分ぐらいかかるため、写真撮影や段取りを含めると1セットで最低3時間はかかります。それを毎日ひたすら繰り返し、最終的に40セット(200個)まで行いました。また、10セットごとに完成した部品をお客様に送って、状況を都度確認してもらいながら進めていきました。

―手応えを感じたのはどのタイミングでしたか?

細川  150個ぐらい削り終わった頃、自信が確信に変わっていきました。200個を無事に削り終わり、結果をまとめてお客様に報告しました。その後のお客様の各拠点でのテストでも全体の平均値で従来品の約4倍の寿命を達成しました。当初の目標値の約2倍を圧倒的に越える結果に大変驚いておられました。短期間での社内テストがクリアできたからこそで、これは生田さんの努力のおかげだと思います。

生田  私は、とにかく一生懸命加工し続けただけです。当社にとって重要なテストであることは十分理解していましたので、目の前の加工に集中し続けました。

冨永  今回の成功のカギは、若手二人を信頼して任せたことです。我々のように、なまじ経験があると、話を聞いた段階で「それは無理だ」とすぐ決めつけ、やってみようとしない。しかし、細川さんも生田さんもまだ経験が浅かったために、頑張ればできるかもしれないと、とにかく「やろう」と前向きに取り組んでくれた。失敗することを恐れず、ひたむきに努力してくれた若手のおかげで、結果が出たのだと思います。

―お客様へのメッセージをお願いします

細川  DF2XLBFは苦労の末に生まれた自信作です。価格と寿命のコストパフォーマンスがとにかく抜群です。CVDダイヤモンドコーティングが適する被削材の加工であれば、ぜひ一度お試しいただければと思います。

トップページへ